Short story

□たまにはスパイスを
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今日はエイプリルフール。

………と言うことで俺、アーサー・カークランドは恋人の本田菊の家、とまあ、日本に来ていた。
今日はどんな嘘をついてやろうか…そんなことを考えていた。

ピンポーン

ベルを鳴らす。
しかしいつもすぐ出てくるはずの菊が出てこない。
――アポは取った筈なんだが……?

ガラッ

俺は中へ入る。
正直ためらいもあったがしかし入ることにした。

居間、キッチンと次々に回っていったがやはり菊の姿はどこにもない。
おかしいな…と思っているとき、

「…っ…レッドさ……」

微かだけだったが庭のほうから声がした。
俺はすぐに居間から庭へと向かう。

―――――するとそこにいたのは……

「アル…フレッド…?き、菊………?」

信じたくなかった、けど見てしまった。

菊とアルフレッドが抱き合っているところを――

「あ、アーサーさん!?」

「アーサー……何で居るんだい?」

二人が驚いた顔をしている。
何で……何でだよ……
俺は訳が分からなかった。
どうしてアルフレッドが菊の家に居るのか、何故抱き合っていたのか。

菊は俺の事嫌いになったのか……?

「あ、アーサーさん…」

「菊……」

「はい……?」

「お前は俺の事嫌いになったのか?」

「違っ…」

「じゃあ何でアルフレッドと一緒に居るんだよ……」

「っ……」

するといままで菊の横で黙って見ていたアルフレッドが口を開いた。
その顔はまるで見下しているかのような顔で。

「まだ気づかないのかい?アーサー」

「なんだよ」

「菊は俺の事が好きなんだよ」

「ッ…………」

聞きたくなかった。
菊はアルフレッドの事が好き?
俺は……だったら俺の事は全部嘘だったのかよ……!

そう思った瞬間、俺は走り出していた。

「アーサーさんっ!」

俺を呼び止める菊の声ももう俺には聞こえていなくて、
全てが聞こえなくなって、
複雑な感情ばかりが渦巻いていた。

いつから菊はアルフレッドの事が好きになったのか、
俺のどこがいけなかったのか。
この間まで笑い合っていたのは全部嘘だったのかよ……!

そう思うと全てに裏切られた感じがあって仕方なかった。
気持ち悪くて今にも吐きそうだ。

何で?どうして?
ああそうか、菊は俺の事嫌いなんだ。

…でも何で?
分からない。わからない。

俺は走って走ってあの同盟を結んだ時の丘に居た。
今は昼間なのであの時のような綺麗な星はまだ出ていない。
……ああ、また俺は一人になったのか。

あの時菊が走ってきてくれたんだよな。
けど…もうその菊は俺のもとへは来ないだろう、きっと。

もう、きっと。



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