Short story

□I love you.
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俺は今、菊の家の前に居る。
アポをちゃんととって来てるんだからな!

「菊ー来たぞー!」

「…………はい、入って下さい。」

と、奥から菊の声がする。
俺はふと、おかしい、思う。
いつもなら、玄関まできて、出迎えてくれるからだった。

「はいるぞ。」

俺は家の中に入る。
いつもと変わらず落ち着いた雰囲気のある家だった。
そして、いつも行く居間に行く。
すると菊が縁側に座っていた。
すると菊は俺に気付いたのか、後ろを振り返る。

「あ、いらっしゃいました。アーサーさん。お出迎えしなくてすみません。」

いつもと変わらない菊の姿があった。

「ああ、大丈夫だ。何かあったのか?」

と俺は聞く。
そして菊の隣に座る。

「………………………」

菊は黙ってしまう。
あれ、俺なんかヤバい事聞いたかな……
何て思う。

「あ、き、菊?何か………ッ!?」

俺の行動が一瞬止まる。

「………………………え?」

「菊…………?」

珍しく、人前で泣かない菊が今、俺の前で涙を流していたからだ。

「っ…………あれ?私、何で…………」

「え……………?」

どうやら菊は自分が今泣いている理由がわからないらしい。
所謂、無意識。


…………ああ……俺はバカだ。
恋人の心も気付けないなんて。
菊が涙をながしているその訳は、日頃の精神的ストレスからきている物だろう。
………………そんなになるまで頑張ってたのか………菊………

「すみませ……っ………アーサーさん…」

「………………………………」

今の俺に”泣くな”なんて言う資格はない。
相手の事も気づいてやれないなんて…俺は馬鹿だ。

………なら、今俺が菊に言える言葉は……

「泣いていいぞ」

”泣いていい”しかないだろう。

「いいんだ。溜め込んでるもの、全部流して。」

「っえ…………………?」

「俺の胸なら、いつでも貸してやるから」

今日だけは、いや、いつも、いつでも俺を頼って欲しい。

「すみませ、ん、今日だけは、」

その後、菊は何かを吐き捨てるように泣いた。



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