Dream
□またあいましょう、わたしのうたひめ
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「もー!泣かないの」
やわらかいハンカチで私の目元をぬぐってくれるウタちゃんにますます涙があふれる。
別れがくることはわかっていた。でも、わかっていても、こんなにも悲しいなんて思わなくて。涙がとまらない。
「しょうがないなあ…」
ウタちゃんはそういうと、走って船の方へ行ってしまった。
ああ、ついに愛想をつかされた。そう思った私は、大声をあげた。
ルフィやシャンクス達が、大泣きをする私を見て困っていることは感じ取れた。
それでも泣きやむことはできなかった。
すると、私の手の上にやわらかな布の感触。
そこには、真っ白なワンピース。高価なものであることは幼い私でもわかった。
驚いて顔を上げると、そこには優しい笑顔のウタちゃんがいた。
「あたしの服、特別にあげるわ。大切に着てよね」
私の目の前に突然あらわれた、とってもかわいくて美しくて強くて綺麗な少し年上の歌姫。
憧れて、ずっとそばにいたくて、ずっとそばにいてほしくて、でもそれは叶うことのない願いで。
別れがきた今、泣くことしかできない無力な私。
それなのに、ウタちゃんは私を抱きしめてくれた。
「次会う時は、これが似合う素敵な女の子になってなさいよね」
あたしみたいなね、と言うとウタちゃんは私の頭を何度もなでてくれた。
うん、うん、と大きくうなずく私に、ウタちゃんは耳元で優しく囁いた。
「絶対、また会いにくるから」
それまで待ってて。
その言葉を最後に、温もりがそっと離れていく。けれどもう、私の涙はとまっていた。
真っ白なワンピースを抱きしめて、ウタちゃんに大きく手を振る。
私の大好きな女の子は、最後まで笑って手を振り返してくれた。
それだけで私は、生きていける気がしたんだ。