水塊に溺れる
□血の吐息
1ページ/1ページ
自分で言うと、自惚れていると罵られそうだが。
俺は、色々な人から愛されて育った。
家族はもちろん、親戚、友人に愛された。恵まれていると感じる。
幼児期、そして小中高、俺を囲って黄色い声をあげる女の子達からはもはやアイドルのように扱われている。
嫌な気はしなかった。嫌われるより、愛されて好かれるほうが嬉しいに決まっている。
でも…自分が心から愛している人に振り向いてもらえないのなら。
それは、意味があるのだろうか?
「名前ちゃん、好き」
「ありがとう」
「…名前ちゃんは?」
「嫌いじゃないよ」
困ったように、けれど優しく彼女は笑う。
ああ、そんな顔させたかったわけじゃないのに。
俺はただ、君の気持ちを聞きたかっただけなのに。
軽い言葉だと思われているのだろうか。いや、今まで女性を取っかえ引っ変えしていた自分に信頼がないことはわかっているけれど。
だけど、君への愛は本物なんだ。
大きなケーキも、くまのぬいぐるみも、彼女の気を引けやしないだろう。
どうすればいい。
俺は、どうすればいいんだ?
どうすれば信じてもらえる?好きになってもらえる?
愛して、もらえる?
静まり返る部屋で、ボールを抱きしめながらうつむいた。
君との恋が、俺の最後の恋だ。
だから諦めるなんて選択肢は俺には無い。絶対に、無い。
振り向いてもらえるまで、何度でも好きと伝えよう。
俺は本当に、君のことを愛しているのだから。
もう二度と、背を向けたりしない。