めい

□Call me!!
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(……寝れない)


これで寝返りを打つのは何度目だろう。

ベッドに潜り込んで早二時間、一向に眠気はやって来なくてただ時間だけが過ぎていく。こんなに眠れないのは多分、今日は仕事らしい仕事が無くて体が疲れていないせいだ。


(……違うか)


自分についた嘘に苦笑が漏れる。
正しい原因は、もっと精神的なもの。


(……シズちゃん…)


ここ最近、二週間ほど会えていない恋人を思い浮かべたら溜め息が出た。胸の奥が締め付けられて切なくなる。清潔な柔軟剤の匂いより、煙草の匂いに包まれたい。

頭の中で色々な、けれど全てシズちゃんに関わる気持ちがぐるぐるもやもやと回る。ひたすら考えて悩んで恋しがって、そうして閉じた瞼の裏側がじんわりと熱くなったのを感じたらもう、限界だった。


「………っ!」


がばっとベッドから跳ね起きて、サイドテーブルに置きっぱなしにしていた携帯を手に取る。携帯を何台か所持している中で俺が唯一、外には決して持ち出さない大切なプライベート用のそれを開き、電話帳から番号を呼び出す。

そして耳に当ててコール音を聞く事数秒、俺が予想していたよりもずっと早くにその音は途切れた。


《…………》

「あ…えと、もしもし?」

《っ、臨也…》


通話中になったのに言葉が無かったから恐る恐る呼んでみれば、ずっと聞きたくて求めていたシズちゃんの声が返ってきた。てっきり寝ていると思っていたから嬉しくて堪らなくて、体がふるふると震える。


「ご…ごめんね、急に」

《いや…、っ…俺こそ全然、連絡も出来ねえで…悪い…》

「ううん、大丈夫だよ!そもそも俺が立て込んでるから時間取れないんだ…し…」


ここまで話してふと違和感に気付いた。何だかシズちゃんの声が途切れ途切れに聞こえる、というか呼吸が荒い事に。まるで全力疾走を終えた直後のランナーみたいだ。

まさかとは思うけど、もしかして仕事先で怪我したのに「撃たれて無いから鉛中毒にはならねえし」とかいう、あのよく分からない持論で我慢したりしてないだろうか。

そうして気になった俺が口を開こうとした時、不意にシズちゃんの方から何やら擦れるような音と粘着質な音も聞こえてきて、


《…っ、あ、だめだ》

「え?シズちゃん?」

《臨也…っ、臨也、いざや、ぁ…っ》

「………!!!?」


耳から直接熱湯を注ぎ入れられたかのように、身体中が熱くなる。携帯越しに俺を呼ぶシズちゃんの声はねっとりと濃厚で甘くて淫らで、正に、情事中のソレで。

それで俺は漸く理解した。どうやら俺は溜まりに溜まった性欲を吐き出す作業──要はシズちゃんの自慰中に電話を掛けてしまった、と言うことに。


《っ、いざや、》

「うぁい!?」


恥ずかしさと混乱とで軽く意識を飛ばしていた俺を、シズちゃんの掠れ声が呼び戻す。どうやらまだ達せていないらしく、微かに聞こえる衣擦れの音とぬちゃぬちゃという淫猥な音と共に、シズちゃんは言った。


《も、シたい、我慢できねえ》

「は…え、でも」

《臨也も、このままヤって》

「や…、やだ…」

《頼む…なあ、いざや。俺もう、手前のエロい声聞かなきゃ、イけねぇんだよ…っ》

「……っ!!」


耳と心臓が炎上するかと思った。

そんな事を恋人に言われて拒否出来るほど、俺は淡白じゃないし薄情でも無い。そもそもこうして俺が電話を掛けたのはシズちゃんを(性的な意味では無いとは言え)欲していたからであって──、


「……わかっ、た…」


♂♀


「ん…ん、ふぁ…」

《臨也…気持ちいいか…?》

「ん、きもち…い…」


壁に背を預けてベッドに座ったままの俺の手には携帯、そしてもう片手は緩く勃起した自身を掴んですりすりと扱き上げている。わざと焦らすように愛撫しているのは、電話先の変態恋人の指示だ。

こうして自慰をするのなんて(普段はシズちゃんが頼みもせずに搾り取って来るため)久々過ぎて、掌中で時折脈打つ自身が何だか別の生き物にすら思えてくる。


《お…濡れてきたな…》

「…っ、んぅ…」

《少し気持ち良いと直ぐにちんぽ濡らして喜ぶようになってよ…ほんと、すっかり可愛い淫乱だな、臨也君?》

「あ…や、やだぁ…っ」


確かにシズちゃんの言う通り、俺の自身の先端からは先走りが垂れ始めていた。テレビ電話でも無いのにあっさり見透かされて、まるで本当にシズちゃんの手で愛されてるかのような錯覚に陥る。

更に併せてわざと卑猥な言葉を交えて罵られれば、自身はぴくぴくと反応をしながら悦ぶように固さを増した。…ああ、何でこんな風になっちゃったのかな、俺の身体は。


《なあ臨也、電話、手前のエロいちんぽに擦り付けてくれよ》

「ふぇ…、や…はずかし、い…」

《いいだろ?臨也のちんぽが悦んでるの、ちゃんと聞きてえんだよ…》

「……っ、うぅ…」

《代わりに目一杯、好きなだけちんぽを苛めて気持ち良くなっていいから。な?》

「……わ、かっ…た…」


甘く宥め諭すように囁かれると、弱い。

俺は沸き上がる羞恥に堪えるように唇を噛み締めると、そっと携帯を耳から離した。音がよく聞こえるように画面部分の方を掴んで、テンキー部分の方を当てるように勃起して先走りに濡れている自身へと近付ける。そして少し躊躇ってから、


「っ、あぁ、んっ…」



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