短編集

□死神の巫女
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草木も眠る丑三つ時のことだった。
見事、出雲大山三途神社の
千段の階段を上りきり、
本殿にたどり着いた一人の男がいた。

髪の毛は烏の様に真っ黒。
闇夜と同化してしまうほどだった。
髪は浪人のように髪を伸ばしていたようだが
肩のところで適当に切ってあった。

彼の右手には提灯。
左手には何も持たず、持て余していた。
腰には、刀ではなく
何だかよく分からないものが
十手とともにぶら下げてあった。言うなれば、
西洋の宣教師達が
身に付けている
銀の十字を縦に半分に切ったような形をしていた。

その男は千段目にある鳥居を見ようとして
提灯を上にかざした。
しかし、ため息をついて
そのまま本殿へ向かってしまった。
どうやら、提灯の光だけでは
見えなかったらしい。

本殿を探しているのだろうか。
しばらくの間、
周りをきょろきょろと見渡していた。
すると、彼の気づかない間に
誰かが近づいてきた。
背の高い女性だった。

「君は誰だ?
 こんな夜中に忍び込んで。
 悪いけれど、君がいては
 巫女たちが怖がってしまう。
 あたしのところに来てもらうよ」

そう言われた後、男の意識は途絶えた。
  
            
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