短編集

□大空シネマ
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とある閑静な住宅街に
車のブレーキ音と
衝撃音が響き渡った。

近くの道路を見てみると
傷だらけの人がいた。
女子中学生が車に引かれたらしい。
近くにはブレーキの跡がある。
車に引かれたようだ。

しかも、質の悪い事にその車は逃亡した。
彼女はひき逃げされたのだ。

たまたま近くを歩いていた男が
その女子生徒に必死に声をかけたり、
肩を強く叩いたりした。

「おい!おい!大丈夫か?!
 しっかりしろ!おい!返事しろ!」

だが、女子生徒は何も答えない。
ただの屍のようだった。

(まさか、コイツ………!!)

男はある確信にたどり着いた。

「ちょっ……!!マジかよ?
 誰か!!
 救急車を呼んでくれ!!」

「えっ……?!何があったんですか?!」

彼は必死に叫んだ。
すると、彼の叫びを聞いて、
女が駆け寄って来た。
彼女も彼と同じ様に
女子中学生の近くしゃがみ、
その姿を覗き込んで、
男から事情を聴いたんだ。

「こいつさっきひき逃げにあったんだ。
 何聞いても答えない。
 もしかしたらって可能性も十分ある」

彼はそれしか言わなかった。
彼女は彼の言った
「もしかしたら」という言葉を聞いて、
バッグから携帯電話を取り出して、
手際良く119と順番に押して行った。

「本当ですか?!
 じゃあ、救急車呼びますから。」

彼女は少し離れた場所で

「もしもし?!
 救急車をお願いしたいんですが…。
 はい……はい……そうです…。
 住所は………」

消防署に連絡していた。
一方彼は必死に声を掛け続けていた。

しばらくすると次第に
野次馬が集まって来た。
一斉に彼らに視線が集まるが、
全然気づいていない。


救急車がサイレンを鳴らしながら
急いでこちらに向かって来た。
女子中学生はすぐさま病院に運ばれたが
死亡していたとの事だった。









それから………2、3年後の事。

なぜか、いた。
最初に気づいた彼は
自分の目を疑ったそうだ。
なぜなら死んだはずの彼女が
彼の目の前に現れたのだから。

『君は死んだのに何でいるの?』

彼は彼女に問いかけた。
彼女はこう答えたそうだ。

『分からない』

『死んだ人間は、この世に未練があると
 現れるようだけど何かあったの?』

彼はさらに問いかけた。

『分からない。』

彼は、彼女に何を聴いても
分からないの一点張りだったという。

彼はとうとう諦めて
迷惑をかけなければ良いという
条件でいさせてあげたという。


そして、彼女もなお、いるのである。
ある中学校の屋上でフェンスに座って
空をずっと見上げているのだという。

     
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