短編

□真夏のヒーロー
1ページ/1ページ




ギラギラと視線で人が殺せるなら、今頃私はおだ仏していたであろう
鋭い視線を受けながら私は休みなく手を動かす。


時折、チラリと顔を上げて様子をうかがう。


その度に睨んでくる彼は、本当に聖職者なのだろうか


しばらく私が大人しく、勉強を続けているとトイレに席を立つ先生。


その隙に私は、素早くメールを打つ。



―――――――――――――――――――――
To 破廉恥侍
―――――――――――――――――――――
件名 無題
―――――――――――――――――――――
本文


片倉先生怖い助けて



―――――――――――――――――――――



メールを送信し終わり先生が帰ってくる前にとシャーペンを握る。


「ほぉ、メールとは余裕じゃねえか。」

『っひい!!』


しかし、時既に遅し。

私の後ろにはいつの間にか片倉先生が立っていた。

そして、私の机の上にドサリとおかれた新しい課題。



『っ!?』

「携帯いじってるぐれぇの余裕があるんならこれぐれぇできるだろ。」


そう言って、ニタリとあくどい笑みを見せる先生。


あぁ……メールなんかしなけりゃよかった。







それから、しばらくして、廊下からダダダダダダダと凄まじい音が響く。


「あ?」

『?』


不思議にい思い勉強の手を止めて顔を上げたところで
突然変化した目の前の状況が信じられなくて目を見開く。


ドガアァンと大きな音を立てて外れたのは、教室の扉だった物で

それにも驚いたが、そこから出てきたものの方が私には信じ難かった。


「名前殿おおぉぉぉ!!!!!無事でござるかあああぁぁぁ!!!!!」


私の名前を叫んだこの声には聞き覚えがあり思わず目を反らす。

それに何を勘違いしたのかこちらに向かってくるそれ。


「そ、某、遅かったのでござるか!?」


それは、絶望したように膝をついたと思えばガバリと起きあがりキョロキョロとまわりを見渡す。


「片倉殿おぉぉ!!!片倉殿は何処だあぁぁぁ!!!」


仕切りに片倉先生の名前を呼んで辺りを見渡す。

しかし、視界が狭いのか片倉先生を見つけることが出来ないみたいだ。

確か、彼のバイトは……遊園地の戦隊ヒーローのレッドだ。

夏休み前に喜々として語っていた事を思い出す。


「おい、さっきお前がメールした、破廉恥侍って……」


先生もこの戦隊ヒーローのレッドが誰だかわかったのか
疑問を投げかけてくるそれに私は、目を反らしたまま無言で頷く。


「破廉恥……?っな!!名前殿は破廉恥なことをされたのでござるのか!?」


そう言って、私に詰め寄ってきたヒーローを見ないように俯く。


それに、また勘違いしたのかっばと片倉先生のほうを向くヒーロー……幸村


それに、ガバリと腰に抱きつく。


「名前殿!!!何故引きとめるのですか!?っは!!!もしかして、名前殿は片倉殿のことが……」


なんて、言っている幸村に静かに首を振る。


『ごめん、今日はただの補修、幸村勘違いだ。』

「!?」


「おい、終わったか?」


『はい、先生ごめんなさい。』


壊れた扉をなおす、先生に私は思わず土下座した。







レッドでござる!!
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ