東の雷神

□嫌な予感が止まらない。
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温かい風に吹かれ髪をなびかせた。
さらさらと音を立てる政宗の髪をじぃっと見つめていると政宗はこちらを見て「なんだ?」と不機嫌そうに言った。
私が、「いいや別に」と答えると政宗は、さもつまらなそうに再び視線を戻した。

たった今、戦が終わったところだった。
勝利したのは勿論伊達軍。
私はただ皆が戦っているのを遠くで見ていただけ。
別に眼で見なくとも私の土地の中、嫌でも情報は入ってくる。
人が死に、また死んでいく。そんなのを身体に感じながら。
私達は今戦の跡地を眺めていた。死んでいった者達に同情なんかはしない。
強いものが生きて弱い物が死んでいくのは自然の原理だから。
それでも、やはり何処か心の中では同情してしまう自分が居た。

政宗は重い腰を上げて立ち上がった。
そして私に「帰るぞ」と一声かけると馬に乗り遠くで私達を見つめていた小十郎の所へ駆けて行った。

夕焼けの橙色に染まる空の下。私はたくさんの命を身体に感じ新しい命へと送る手助けをした。
輪廻転生。死んだものたちは新しい命へと生まれ変わるだろう。
私の仕事でもある輪廻転生を終えて私は政宗達の後を追った。

しかしその途中、私は視線を感じて立ち止まった。
ぴたりと動きを止め視線の方向を見るとそこにはこの間話した春日山が居た。
普段山の神は自分の山から離れない、山の均衡が崩れてしまうからだ。
まあ、少しの間ならば自分の力に近い者や、兄弟に任せる事があるが。
これは何かあったに違いない……。酷く嫌な予感がした。

春日山は藤色の髪と、藤色の着物を身に纏い涼しげな目元を私にしっかりと向けていた。

「何があった、」

鋭い口調で言うと、春日山は厳しい表情をしながら「山が一つ死んだ」と重い口を開いた。
山が死ぬということはその周りの土地に悪影響が出る。
さっきも言ったように山の神がいないと均衡がとれなくなってしまい、山の植物や川に影響がある。
それだけではない動物達も子を成さないかもしれない。

いや、それよりも何故私がその事に気づいていない!?
山の情報は私の中に入っていく筈なのに…。最近、本当におかしい。
そう、私は最近土地の情報が入らなくなってしまった。理由が何か分からない。
しかし、分かるのは西側の風神が絡んでいるという事は間違いない。

「場所は…」

「信州、西側に近い山だ」

やっぱり西か……。

「春日山、前にも話したが一度皆に収集をかける。」

「…どうしても為さるのですか。」

「このままでは東の土地は狂う。お前達が離れている間の山は私の力も加えておくから大丈夫だろう。」

「しかし、それでは雷神様の力が…」

「なに、一週間で戻る、その間は任せたぞ」

「…御意」

そう言うと春日山は藤の花を散らして、藤の香りと花弁を残し消えた。

城に戻る途中、胸がざわついて仕方が無かった。




.


ぐはっ、短っ!!
一応自分の中で東西は関ヶ原で分けてるつもりです!
けれど管理人は地理が大の苦手なので間違ってりる場合がありますのでご了承ください!!
 

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