小説
□悪ノ王国〜ボカロパロディ
2ページ/12ページ
1 moonlit bear / mothy_悪ノP feat.初音ミク&KAITO
〜全ての始まりの物語〜
暗い暗い森の中をオレンジの髪の女−−ナミが歩いていた。ふと顔を上げると、綺麗な月がうかんでいた。
−あの子が死んだ日も、こんな夜だったわ、たしか…
生気のない目でナミは森を歩いていた。
ナミと愛する夫のあいだには愛しい子供がいた。だが、その子は死んでしまった。他の子供は死んだりしていない。
理不尽だ、とナミはずっと思っていた。どうして、どうして自分達だけがこんなに悲しむのだろう。何かいけないことをしたのだろうか…?
気付いたら、森の片隅にいた。そして、そこで…
『クライ クライ森の片すみ
赤い 赤い 果実を拾った』
−ああ…これはきっと、神様からのステキなプレゼントね。
ナミは、その赤い二つの果実をそっと抱き寄せたのだった。
−持って帰ったら喜ぶかしら?嬉しすぎて泣いちゃうかもね。
嬉しそうに微笑んで、ナミは果実を抱えて歩き出した。早く家に帰らないと…
『こんな暗い夜には 恐い熊がでるから』
熊…それを思い出したのか、ナミは花咲く道の中、急いで駆け抜けた。
このまま帰れば、きっと幸せになれるはず。そう思って、走る速度を早めた。
ところが後から、恐い顔をした熊がナミを追い掛ける!
「キャ…!」
さらに速度を早めた。でも、本当はわかっていた。この果実が、あの熊の宝物だということを。
正しい道はすでにうしない、ナミは泣いて、熊も泣いていた。二つの果実も泣いていた。
やっとたどり着いた愛しの我が家。
彼−−緑の髪の夫、ゾロは、ナミを見て優しく微笑んだ。
「遅かったな。飯作って…!?」
だが、ナミの抱えた果実を見て、とても悲しい顔をした。
「いいか?俺達の子供はもうこの世にはいないんだ。その子達は、本当のお母さんのもとに返してやれ。」
「!……」
ナミは自分が腕に抱えている物を見た。それは赤い果実ではなく、まだ産まれたばかりの赤ちゃんと、一歳ぐらいの赤ちゃんだった。
「あ…あのね…わかってた!わかってたの!でも、いつか本当のことがわかっても…!この子達が…どうしてもほしかったの!」
泣きじゃくるナミを、ゾロはそっと抱き寄せた。
−神様、私は…許されぬ罪を犯してしまいました
「今ならやり直せる。この子達をお母さんのもとに…」
ゾロの言葉を遮って、ナミが叫んだ。
「無理よ!!だって、もう…」
ナミの目線の方を追ったゾロの目が、大きく見開かれた。
『家の外で横たわるは 一人の女の亡きがら
傍らにはミルクの満ちた 小さなガラスの小びん』
解説
ナミは自分の子供を亡くしていた。そして、森の片すみで子供を二人ひろい、その二人の子供の母親を殺してしまった。