小説

□悪ノ王国〜ボカロパロディ
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1 moonlit bear / mothy_悪ノP feat.初音ミク&KAITO

〜全ての始まりの物語〜




暗い暗い森の中をオレンジの髪の女−−ナミが歩いていた。ふと顔を上げると、綺麗な月がうかんでいた。

−あの子が死んだ日も、こんな夜だったわ、たしか…

生気のない目でナミは森を歩いていた。

ナミと愛する夫のあいだには愛しい子供がいた。だが、その子は死んでしまった。他の子供は死んだりしていない。

理不尽だ、とナミはずっと思っていた。どうして、どうして自分達だけがこんなに悲しむのだろう。何かいけないことをしたのだろうか…?

気付いたら、森の片隅にいた。そして、そこで…

『クライ クライ森の片すみ
赤い 赤い 果実を拾った』


−ああ…これはきっと、神様からのステキなプレゼントね。

ナミは、その赤い二つの果実をそっと抱き寄せたのだった。

−持って帰ったら喜ぶかしら?嬉しすぎて泣いちゃうかもね。

嬉しそうに微笑んで、ナミは果実を抱えて歩き出した。早く家に帰らないと…

『こんな暗い夜には 恐い熊がでるから』

熊…それを思い出したのか、ナミは花咲く道の中、急いで駆け抜けた。

このまま帰れば、きっと幸せになれるはず。そう思って、走る速度を早めた。

ところが後から、恐い顔をした熊がナミを追い掛ける!

「キャ…!」

さらに速度を早めた。でも、本当はわかっていた。この果実が、あの熊の宝物だということを。

正しい道はすでにうしない、ナミは泣いて、熊も泣いていた。二つの果実も泣いていた。




やっとたどり着いた愛しの我が家。

彼−−緑の髪の夫、ゾロは、ナミを見て優しく微笑んだ。

「遅かったな。飯作って…!?」

だが、ナミの抱えた果実を見て、とても悲しい顔をした。

「いいか?俺達の子供はもうこの世にはいないんだ。その子達は、本当のお母さんのもとに返してやれ。」

「!……」

ナミは自分が腕に抱えている物を見た。それは赤い果実ではなく、まだ産まれたばかりの赤ちゃんと、一歳ぐらいの赤ちゃんだった。

「あ…あのね…わかってた!わかってたの!でも、いつか本当のことがわかっても…!この子達が…どうしてもほしかったの!」

泣きじゃくるナミを、ゾロはそっと抱き寄せた。

−神様、私は…許されぬ罪を犯してしまいました

「今ならやり直せる。この子達をお母さんのもとに…」

ゾロの言葉を遮って、ナミが叫んだ。

「無理よ!!だって、もう…」

ナミの目線の方を追ったゾロの目が、大きく見開かれた。

『家の外で横たわるは 一人の女の亡きがら
傍らにはミルクの満ちた 小さなガラスの小びん』



解説

ナミは自分の子供を亡くしていた。そして、森の片すみで子供を二人ひろい、その二人の子供の母親を殺してしまった。
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