※転生パロ。池田が女の子のため、苦手な方はご注意ください。富松高2、池田♀高1です。
何百年ぶりに再会した後輩が、女の子になっていた。
小さな頃から記憶があったおれは、毎日毎日誰かに再会することを信じて過ごしてきた。学年が変わるたび、知らない場所を訪れるたびに、込み上げる期待と、その期待を押さえつける気持ちがごちゃ混ぜになる。
そんなものだから、池田に再会したときはたまらなく嬉しかった。女の子になっていたことについては、こんな転生もあるんだと驚いたが、中身はなんら変わらない。あの素直じゃない生意気野郎、池田のままで、これからまた池田とくだらないやりとりが出来ると思うと、楽しい気持ちになったものだ。
いまになって言える。あの時の自分は、楽観視という言葉に尽きる。昔の後輩と再会した喜びがあまりにも大きすぎて、男女の差なんて大したことではないと思っていたのだ。
頭をなでたときの柔らかい髪、どこからか香るいい匂いに、手に触れたときの柔らかい感触。一つに束ねた髪型なんて、昔と何ら変わらない。変わらないはずなのに、どうして見え隠れする首筋に、こんなにどきどきするんだろうか。
短すぎず長すぎない、適度に調節されたスカートから伸びる白い足。髪を束ねる可愛らしい髪飾りはシュシュといったっけか。タオルは花柄だし、かばんにはキャラクターのマスコットがぶらさがっているし、スカートの中からみえる下着の柄は水玉だし。スパッツぐらい履けよと言いたい。そういうところは昔の感覚が抜けないのだろうか。
「水玉、みえてるぞ」
言えば、きゃあと可愛らしい悲鳴をあげてスカートを押さえる。頬を赤らめて、おれをじろりと睨み付ける池田の表情も仕草も、女の子のそれだった。
池田三郎次は、いまや女の子なのだ。
「サイテーだな、アンタ」
「いや、お前もスパッツとか履けよ」
「窮屈だからいやだ」
「……あ、そう」
不可抗力だと異論を唱えたいところだが、ここで反論したらさらに何倍もの反論をくらうことになりそうなので、テキトーに頷きかえすのみにした。大人になったんだ、おれも。
睨んでくる目にほんのり涙が滲んでいるのは、羞恥心からだろうか。こいつ、こんなに泣き虫な奴だっけ。
涙目がなんだか可愛くてまじまじと見つめると、池田に胸を叩かれた。ごふっと変な声がおれの口から漏れる。
「なにすんだよ!」
「あんまりよってくるな。きもちわりい」
言われてみれば、池田の顔がすげえ近くにあった。どうやらまじまじと見つめるうちに、無意識に池田へ近寄っていたようだ。
いまや池田との距離、10センチくらいか。至近距離でみる池田の顔は、とても可愛い。まつげ長いし、肌ぷにぷにしてそうだし、唇ぷるぷるしてるし、超触りてえ。
「あ、あんまり見るな」
おれから視線をそらし、恥ずかしそうに溢した言葉に、胸の奥あたりがどくんと弾んだ。
最初は、また一緒にばかな会話をできることが嬉しかった。男だとか女だとか、関係ないと本気で思ってたのに。
そっと頬に触れると、池田の肩がぴくりと震えた。感触は予想をはずれ、ぷにぷにというよりすべすべしていた。やわらかくて、すごく脆そう。おれと全然違う。
池田と一緒にいて、心臓がどくどくと煩く響くようになったのはいつからだっただろう。気づかないフリをしていた心臓の音は、もうフリができないくらいに、どくんどくんと鳴りやみそうにない。
おれなりに迷ったし悩んだ。でも、前世が男とか後輩とか、もう知らねえ。池田といると、どきどきするんだからどうしようもねえよ。
もう、ここらが限界だ。
「池田のこと、好きなんだけど」
気づかないフリなんて、できるわけないんだ。
とめられない
120930