※富松が幼児化しています。言葉づかいが赤ん坊です。苦手な方はご注意ください。大丈夫という方はこのまま下へスクロールお願いします。























体を揺すられ目を覚ました。揺すってる相手は作兵衛だろう。いつも威勢良く俺を起こしてくれるから。ゆさゆさと小刻みに揺らされる体。なんだか今日は力が弱い。気のせいかな、起きたばっかだから感覚鈍いのかも。
あー、そんなにぺちぺち叩かないで。作兵衛に起こされるのは嬉しいけど、俺はまだ眠たいんだ。

「しゃんのすけ、おきろ!」

ん、そんな可愛い声で言われなくたって起きなきゃいけないのはわかってるよ。でももうちょっと、あとちょっとだけ、寝させてくんないかな。

「しゃんのしゅけえ、おきろよう…… 」

あーわかったわかった起きますよ。可愛いなあ、まったく。なんだか今日の作兵衛は威勢よくないな。調子狂う。まあいっか。目、開けよー。

「やっとおきたあ。おはよう、しゃんのすけ」
「…………………おはよ」


え、何これ。

「なんかわかんねえけど、体がちっちゃくなっちゃった。しゃんのすけ、どーしよう」

目を開けると、子どもがいた。いや、俺も子どもなんだけど、俺より年下、つか一年より下であろう子ども。幼児って言った方が近いかも。

「えっと……どこから来たの?」
「なに言ってんだ!おれだよおれ!」
「あー……っと、どこのおれ君?」
「とまちゅしゃくべーだ!」
「………」

俺、疲れてんのかな。なんでこんな幻覚見えるんだろ。作兵衛?この子が?俺ら十二じゃん。
確かに、ちょっと似てる気がしないでもない。真ん中でわけた長い前髪とか、団子っ鼻とか、口調とか。こんな赤ちゃんみたいなしゃべり方ではなかったけど、威勢良い感じの口調が似てる。作兵衛の幼少時代ってこんなだったんじゃないだろうか。
なんか作兵衛にしか見えなくなってきた。気のせいか雰囲気までそっくりだ。

「………ちっさいね」
「うりゅせえ。なんでこんなことになっちまったのか、全然わかんねえんだ」
「朝、起きたら?」
「うん」

こくりと頷く作兵衛。表情が暗い。そりゃそうか。いきなり体が縮むとかびっくりするしこわいし不安だよな。
寝転がってた状態から体を起こし、両腕を広げる。作兵衛はきょとんと俺を見ている。斜めに傾ける首が可愛い。

「作兵衛、おいで」
「へ?」
「大丈夫だよ。ちっちゃくなったって作兵衛は作兵衛だ」

作兵衛の視線が大きく揺れた。目が赤らみ、涙が滲みだす。

「大丈夫、作兵衛。こわくないよ」

ぎゅとしがみついてくる作兵衛をそっと抱きしめた。腕にすっぽり収まる体。柔らかくて、細くて、ちっちゃくて折れちゃいそう。
なんでこんなことになったのかはわからない。けど、腕の中でわんわん泣くこの子は間違いなく作兵衛だ。匂いが一緒だ。作兵衛の匂い。

「しゃんのしゅけ、おれ、どーしよう」
「大丈夫、なんとかなる」
「ほんとうに?」
「作兵衛は俺が信用できない?」
「………できない」

こんな時までそんなこと言いますか。

「だってお前すぐ迷子になりゅし、いっつもおれをこまらせる」
「俺がいつ迷子になったの」
「そーいうとこが信用できねえ」

はいはい、わかったよ。どうせ俺は信用ありません。でも、作兵衛はそんな俺を頼ってくれるよね。
安心させるため背中を軽く叩いてやると、変に力んでいた作兵衛の体から力が抜けた。

大丈夫だよ。小さくなったって、俺が側にいるから。


20101213


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