※次富←池ですが池田が出ていません
自惚れかもしれないんだけどさ、と眉間に皺をよせる作兵衛。俺は、うんと相づちを打って先を促す。
「アイツって、おれのこと好きなのかな」
アイツとは池田のことだ。分かっていながら、俺は知らないフリをする。
「アイツって?」
「………池田」
躊躇いがちに放たれた名前は想像通りで、俺は出そうになった溜め息を寸でのところで飲み込んだ。
一つ下の後輩が作兵衛にだけ突っかかっている理由に、さすがの作兵衛も気づきはじめたらしい。池田の態度は分かりやすい。正直、今まで気づかなかった方がどうかしているが、俺はその鈍感さが好きだった。
作兵衛の鈍いところに甘えていた。このまま池田の気持ちに気づかず、俺だけを見ていてくれることを信じて疑わなかった。
「なあ、三之助。どう思う?」
作兵衛の視線が、真っ直ぐ突き刺さる。
でも、ごめん。ライバルにチャンスをやるほど、俺に余裕はない。今を繋ぎ止めるだけで、精一杯なんだ。
「そんなわけないよ。気のせいだろ」
だから、俺は嘘をつく。素知らぬ顔で、白々しく。
そっかと安心したような作兵衛の様子に胸の奥がずきんと痛む。
嘘ついて、ごめん。でも、他の奴のことなんて考えないでほしい。
ずっと、俺のことだけ見ててよ。
嘘をついたのは誰
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