†小説†

□誰にも譲れない願い
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「あらあら。みくちゃんとみつばちゃんったらいつの間にか寝ちゃってる。何か掛けるもの持ってこないと。…あら?これって…」
「う〜ん…」
「あ、みくちゃん起きたの?」
「はっ!短冊飾るの忘れてた。みつば起きて!!」

みつばの願いを七夕に届けなければっ。
別に必死になる必要なんてないはずなのに。
なんとなく…後で文句言われても困るし。

「ん〜?うるさいわね……」
「寝ぼけてる場合じゃないわ。短冊よ、短冊!」
「あっ」
「みくちゃん。はい、短冊」
「ありがとうママ」
「みつばちゃんも」
「ええ。…あれ?」

みつばがジッと短冊を見る。
ふと振り向いた私はあることに気づいた。

「み、みつばそれ…」
「“みつばとこれからも一緒にいられますように”?」

慌てていたから気づかなかったけど、みつばが持っているのは私の短冊。
じゃあ私が持っているのは…。

「“杉崎とこれからも一緒にいられますように”」
「よ、読むんじゃないわよ!」
「先に読んだのはそっちじゃないっ」
「わ、私は何かと思っただけよ」
「わ、私だって!」
「うふふ」

ぎゃあぎゃあ言い合う私達をママが微笑ましそうに笑った。

「ママ?」
「二人で願ったのならきっと叶うわね。だってみくちゃんとみつばちゃんは同じ気持ちだってことだもの」

ママの言葉にハッとする。
まさかわざと逆に渡した…?

「〜〜っ。ま、まぁどーしてもって言うなら、ずっと一緒にいてあげてもいいけど?」
「し、しかたないわね。そこまで言うならいてあげるわよ」
「はぁ?こっちの台詞なんだけど!」
「そ、そんなに真っ赤な顔して言われても説得力ないんだけど?」
「そ、そっちこそ真っ赤じゃないのっ」
「(ふふふ、本当に仲良いわね)」



喧嘩ばかりのみつばと私だけど、喧嘩もできないくらい離れてる織姫と彦星。
もしかしたら喧嘩も幸せなことなのかもしれない。

最初の願いから書き直してくれたみつばの短冊と自分の短冊を見ながら思う。
少なくとも「普段なかなか言えない願い」。
それがみつばと同じ願いだったことが嬉しいのは事実だ。










2011.10.7
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