創作 弐

□そんな冬の日に
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木の幹に預けた背中が底冷えの寒さを伝える。

心まで冷えたかと錯覚させるほどの冷たさは強く彼女の身体を浸蝕し、そしてそれが間違いであると気づけば今度は酷く冷めた笑みを誘発した。

どうして、と自問すれば側近だからと自答する。

腕組みをしながら吐いた今日何度目かの溜息は、音もなくただ静かに灰色の空へと消えた。






「リクオくんが好きなのッ」


彼の目の前に立つ少女は、瞳を伏せながら懸命に言葉を紡いだ。


「・・・ごめん」

「ッ、」

「きみの気持ちは嬉しいけど、ボクはきみをそういうふうには見られない」


冬の風が二人の髪を掠う。

辛いのはきっと少女。

なのに誰より心優しい彼は苦虫を噛み潰したように表情を歪め、深く頭を垂れた。


「・・・うん、分かった。・・・ううん、分かってた」


少女は俯いたままの視線をあげ、やがてゆっくりと微笑んだ。

それがあまりに、見惚れるほどに美しくて―――。


「リクオくんを見てたら分かるよ。・・・大切なんだよね?あの子のこと」


それは慰むようなものではなく。


「ごめんね?分かってたのに、こんなこと・・・、―――でもッ、・・・もしかしたら、もしかしたら私にも、望みが・・・あるかななんてッ・・・」

「・・・」


泣き崩れるその小さな背中に伸ばされた腕が空を切る。

触れれば暖かさが宿る。

きっと少女の心は温まる。

けれどやっぱり彼は、誰より心が優しいから―――。


「・・・ごめん」

「・・・謝らないで。私こそごめんね、これからも・・・友達でいてくれる?」

「ッ、―――当たり前だよ」

「・・・よかった」


冬空を見上げた少女の頬に伝う涙が、ゆっくりと地面を濡らした。






「リクオ様ッ!」


一人、誰もいない教室で校庭を眺める彼に私は駆け寄った。


「申し訳ありませんッ、本家から連絡が入り―――」

「つららッ、!!」

「―――ッ、」


伸ばされた腕。

じわりと感じる温かさが、私の身体をきつく締め付ける。


「・・・リクオ様?」

「好きだよ、・・・つらら」


微かに、けれど確かに彼の手は震えていた。


「リクオ様・・・」


僅かな隙間から入り込んだ風が窓を鳴らす。

それぞれの胸に深く刻み込まれた冬の日に―――。

私は、そっと手を伸ばした。


「・・・リクオ様」








 

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