創作 弐

□仕方ないと笑って
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仕方ないって、笑って?

それでボクを見てくれるなら・・・本望だ。






気を引きたくて、ボクだけを見ていてほしくて、小さい頃から悪戯ばかりしてきた。

いつだって気にかけてほしくて、一瞬だって忘れてほしくなくて。

“見てて!”と言えないボクは、キミの気を引くためだったらなんだってした。


「若」


“若”って何?

名前で呼んでよボクを見て。


「リクオ様!」

「なに?」


あぁ聞こえなかったのか、なんて安堵するキミに笑顔で答えてやるのはボク。

安堵しているのは、ボクを見ていてくれている証拠でしょう?

名前を呼ばれることは嬉しいボクだけを見てるって実感できる、・・・嬉しい。


「つらら」

「どうしたんですか?」

「今日の清継くん、いつも以上に張り切ってて凄かったね」


畳でごろりと寝転がるボクは正座して側に控えるキミに言う。


「そうですね」

「ボクが“あの方”だって知ったらみんな、驚くだろうなぁ・・・」


気を引きたくてありもしない話を振ったボクを、それでもキミは笑わない。


「そのようなことにならぬよう、若をお守りすることが私達の役目です」

「・・・役目?」

「えぇ」

「・・・役目って何?」

「はい?」

「役目って何?・・・つららってボクの何ッ!?」

「わ、か・・・?」


子供だ。

求めた答えが得られないと知った途端、現実から目を背ける。

玩具が欲しくてひたすら駄々を捏ねる幼子と一緒。


「リクオ様・・・」


それでも。

今この瞬間は、ボクを見ていてくれる。


「ごめん、つらら・・・」


我が儘だったよね。

仕方ないって思ってくれていい。

どうしようもないって呆れて。

手に入れたいなんてそんな高望みはしないから。

だからせめて―――。

仕方ないって、笑って・・・?


「ごめんね、つらら。ごめん」






俯きながら、笑みが溢れて仕方なかった。








 

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