創作 弐

□此処に守ると誓う
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安らかな寝息をたてる幼子の身体を布団越しに撫でながら、つららはほぅと息を漏らした。

今日は平生に比べ、寝つきに時間を要した。

ふと視線を遣った先、枕元に転がった子供向けの本は月明かりを受け鮮やかな表紙を輝かせている。


「ん・・・」


微かに漏れた声にハッとしてつららは振り向いた。

が、小さな己の主は瞳を伏せたまま。

つららは絵本を集め棚へと並べると、衣擦れに意識を払いながら部屋を出て、おやすみなさいませと心中で囁きそっと襖を閉めるのだった。


「ふぅ・・・」


廊下へ出れば、高くに上弦が見える。

幼い若君を気遣ってか、闇夜に勢いづく小妖怪達の声も疎らであって、つららは皆に守られ元気に育ってゆく主を頬笑ましく思った。


「お父さん・・・」

「ッ、」


だがつららが自室へと足を向けた、次の瞬間。


「リクオ様・・・?」


確かに聞こえた主の声。

つららは急いで踵を返すと閉じたばかりの襖を再び開いた。


「リクオ様?―――ッ、」


そこに主はいた。

先と変わらず、安らかな寝息をたてながら・・・眠っていた。

つららはその横に腰を降ろすと懐から手巾を取り出し、リクオの目元をそっと拭った。

一筋の跡はすぐに消える。


「・・・」


言葉には出さない。

けれどそれを自分の中で消化できるほど、きっと幼子の記憶には軽くない。


「リクオ様・・・」


つららは穏やかな幼子の寝顔を見つめ、短く息を吐いた。


「未来永劫、お守りします」


その声は、静かな闇夜に凜と響いた。








 

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