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□ゆらりと
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「せっかくの宴に水を差してすまねぇ。正式な挨拶の場はまた設けるが―――オレが奴良組三代目、奴良リクオだ。荒鷲一家には親父も世話になったと聞いてる。これから、よろしく頼む」
年の功は自分達より遥かに下であるはずなのに、全く怖じ気づくことなく、それどころか微かな畏れさえ纏いながら言ってのける三代目に、荒鷲一家の男達は言葉を失った。
「それと、オレの側近を―――つららをよろしく頼む」
優しげな視線を側に立つつららに向け、そして真っ直ぐに彼らを見遣る。
「・・・は、はい!」
「お、お任せくだせぇッ!」
「この荒鷲一家、必ずやつらら組と共に奴良組の力となるよう尽力しましょう!!」
荒鷲一家は深々と頭を下げ力強く言い切った。
つくも神達も頭を垂れる。
「みんな・・・」
つららは吐き出すように呟いた。
組を持つことに奔走していた日々さえ懐かしく感じるのは、温かい心を持った彼らに支えられているからに他ならない・・・。
「リクオ様・・・」
言葉なく肩口へと掛けられた羽織を、つららはゆっくりと撫ぜた。
「・・・ありがとうございます、リクオ様」
「・・・あぁ」
何を、とは言わない。
仲睦まじく歩く二人の背中を、つらら組と荒鷲一家が穏やかな眼差しで見守っていた。
了