創作 壱
□宵越しの戯れ事
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「ひゃ、うッ・・・!?」
突然視界を遮った真暗闇に、つららは頓狂な声をあげた。
「リ、リクオ様ッ!?」
辺りを探るように、畳に手を突きながら身を捩る。
けれどそれは、突如背中から回された手によって阻まれた。
「リクオ様ッ!?」
「あぁ、ここにいるぜ」
耳朶に唇を当てそう囁いてやると、つららはあからさまに身体の力を抜いた。
「な、んですか、突然・・・」
背後からつららの身体を抱き込んでいたリクオは、その手で彼女の瞳を塞いでいるのだ。
「いや、どこかの誰かは主に酌をしてるってのに、肝心の意識を他に飛ばしてるみてぇだったからな」
「そ、そんなッ!!」
「ない、と言えるか?」
「う・・・」
月夜の覗く彼の部屋での酌は縁台でのそれとは違い、襖の向こうの様子を探ろうと自然と感覚が研ぎ澄まされる。
聞き慣れた毛倡妓や首無の声。
黒田坊と青田坊の小競り合い。
小妖怪達の陽気な笑い声。
「・・・随分と楽しそうだったな」
「若・・・」
「そんなに、オレとの酒は面白みに欠けるかい?」
「で、ですからそんなことはッ・・・」
ふるふると髪を揺らしてつららは首を振る。
「―――どうも酒を呷る気分じゃねぇ・・・興醒めだ」
闇の中、つららの耳に響く重い声。
「も、申し訳ありません、若ッ!今一度―――」
「もういい」
「・・・わ、か」
「酒はもういい、・・・他に楽しみができたからな」
「若・・・?」
ふと、至極優しげな音色で囁かれ、つららの肩が震えた。
「ッ、・・・!!」
刹那。
着物の衿からスッと忍び込む“何か”。
つららの肌襦袢を割ったそれは、ゆっくりと彼女の胸の膨らみに触れた。
「わ、かッ・・・」
「どうした?」
「どうしたって・・・ひゃッ、ぁ」
しらを切るリクオの爪先が、柔らかな胸の頂を弾くように触れる。
「だ、めッ・・・です、若!」
「・・・おいおい、禁酒に禁欲とは・・・オレの側近はなかなか厳しいな」
「禁ッ、・・・ちが、ぁあッ!」
「つらら?」
「若ぁ、・・・」
視界を覆われ視覚が麻痺している所為で、つららの身体は小さな刺激にも過敏に反応してしまっている。
「リクオ、様ッ・・・手、を」
「相変わらず冷たいな、お前の肌は」
「ひゃッ、・・・!」
つららの訴えを無視したリクオは、胸の突起を掠めてはゆっくりと揉み拉く。
そしてその隙をついて、リクオの唇がつららの細い項に吸い付いた。
「ひぅッ・・・、!」
「つらら」
「ッ、」
「声出せ」
短く言って、リクオは肌襦袢から抜き取った指先を唐突に彼女の唇の中へと押し入れた。
「んぅッ!?・・・ゃ、はぁッ、!」
「ハッ、・・・」
顎に伝う滴とくぐもる声音。
己が仕向けたことだが、そのあまりの煽情にリクオは苦笑した。
指先で犯す彼女の口内に下半身が疼くのが分かる。
「若・・・ぁ、目を・・・」
「あぁ、分かったから・・・ゆっくり開けよ?」
闇に慣れた瞳に光は辛い。
リクオはつららの瞳を覆っていた指先をゆっくりと解いていった。
最後にくいっと歯列をなぞって、口内も解放する。
「ハッ、ぁ・・・リクオ、様・・・」
くたりと凭れ掛かかりながらも、つららは恍惚とした表情でリクオの目を見据えた。
「大丈夫か?」
「は、い・・・」
囁く度肌に触れる吐息さえ、今は欲望を掻き立てる術となる。
つららの額にかかる汗ばんだ髪を払いながら、リクオは彼女の耳元に唇を寄せた。
「・・・いいか?」
「ッ、」
「・・・」
「・・・」
「つらら」
待ちきれず、さ迷う視線を見つめる。
そうすれば頬を羞恥に染めたつららがコクッと小さく頷いた。
それを合図に、リクオは襦袢を割り空いた手を臍へと滑らせる。
窪みを掠めた爪は恥骨を辿り、茂みを分ければそこは溢れんばかりの蜜に満ちていた。
「ふぁッ、・・・ぁ、!」
後ろから回した手を腰に添え、細い身体を抱き上げる。
「ンッ・・・、」
肩にひやりとした感触を感じ見れば、何度行為を重ねても慣れることなく不安げに揺れる瞳がそこにはあった。
「つらら・・・」
リクオはそっとつららの瞼に口づける。
「大丈夫、です・・・」
彼女の手が自分の背中に回ったことを確認し、リクオはゆっくりとつららの中に自身を埋めた―――。
「ぁ、あ・・・」
「ッ、」
「はッ・・・ぅ、ァッ・・・」
「ッ、つらら・・・」
絡みつく内壁と甘い蜜。
締め付けが襲う吐精感に堪らず息を吐けば、耳元でつららの息詰まりが聞こえた。
「・・・ぁ、あ、・・・ふぁッ」
「ッ、」
それでも下肢に集中した欲は本能―――抽送を促し、リクオは窮屈なそこを粘膜で捩るように思いきり擦り上げた。
「ゃ、ン・・・やぁッ!・・・ぁ、」
部屋に響く嬌声。
緩急をつけじわじわと攻めれば混じり合って生まれる卑猥な水音。
「はッ、ン・・・ァッ!・・・ッ、」
包む快楽に、欲望のまま己を打ち付けた。
「若ぁ・・・わ、かぁッ!」
「つららッ・・・」
「・・・ぁッ、んんッ・・・!だ、めッ、です・・・ぁ、もッ」
一際甲高く鳴く箇所を見つけ、リクオはそこを執拗に責めた。
「ッ、く・・・」
「・・・ひゃンッ、あぁ、・・・」
ただがむしゃらに律動を繰り返す。
深く最奥を突いた時、つららの背が大きく撓った。
「ふぁッ、・・・ァ、!」
互いを包む感覚。
「くッ・・・」
上り詰める強い快楽を感じた時、リクオはつららの中に欲を放った。