雑記

□今はもう遅いと嘆くだけ
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あれこれと理由をつけて、結局はキミに縋っていたいだけだった。





ごめん。

あの言葉はもう永久に届くことはないけれど、今もボクはキミの幸せを願ってる―――。






いつからか。

ボクは彼女を避けるようになっていた。


「リクオ様、お弁当を―――」

「・・・ねぇ、つらら」


その声に、ビクッと身体を震わせる彼女。

後に続く言葉が分かるなら、最初からやらなければいい。


「何度言ったら分かるんだよ、もう子供じゃないんだから弁当くらい自分でどうにかするよ!」


高校に進学してなお、離れることのない護衛。

むしろ三代目を襲名してからというもの、それは一層の強さを帯びたように感じた。

周りは着実に大人へと近づいているのに、自分はいつまで経っても多くの者に守られてばかりで。

些細なこと、だからこそ気になった。


「も、申し訳ありません・・・」


これを、自我の発達過程に見られる反抗的態度と捉えることができたなら、ボクらの“今”は何か変わっていただろうか。


「何度も言わせるなよ」


一歩一歩引かれていく距離に、あの時のボクは確かに優越を感じていた。


「リクオ様、せめて護衛だけは―――」

「来るなって言っても来るんだろ?聞かないでよ」

「・・・リクオ様の御身は、奴良組にとって大事な―――」

「行ってくる」


側近頭として至極当然なことを言っていると分かっていた。

なのに、イライラするのはボクが守られなくちゃならない子供だから。

背中に痛いくらいの視線を感じながらも、振り向く気なんて更々なかった。









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