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□言って欲しいのはお互い様
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「お年玉は」
「その前に明けましておめでとうでしょ」
二人はテレビのチャンネル攻防を終え、こたつで新年を迎えた。
「…明けました」
「うん、知ってるけどね」
『おめでとう』と言うのはどうも柄じゃない気がする。
「お年玉はいいから取り敢えず蜜柑たべよ」
「甲斐性無しめ」
さらっと話しを逸らす銀八の足をこたつの中で蹴りやった。
顔は相変わらず無表情のまま新年のお笑い番組を見ているのに、銀八の足は高杉の内腿を撫でた。
「わ、」
けれどその動きはそこで止まった。
「…へんたい」
小さく罵る。
聞こえないフリで蜜柑を剥く銀八。
早く言ってしまえばいいのに。
『好きだよ』と。
そしたらまだ先の事だって許すのに。
だから早くこっち見ろ、ばか。
再び銀八の足を蹴りやった。
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