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□寒いなら、俺のところにおいで
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「さむい」

一人で呟くも、その現状はやはり変わらなかった。

今の高杉は、所謂鍵を忘れて家に入れない、という所だった。

こんな時に限って大雪たぁ何事だ。

仕方無く玄関の前に座りこむ。

そしてさらに友人にも今は連絡がつかない。

どうしたもんかとついたため息が白く曇る。

本当に今日は寒い。

仕方なく思い浮かんだ教師に電話をかける。

かじかんだ指ではなかなかキーが押せなくて手間取った。

「寒い」

先程一人で呟いた事をそのまま繰り返す。

『うん、暖房入れなよ』

「今外何だけど」

『何で!?まぁいいや、すぐ迎えに行くから俺ん家おいで』

「うん」

そのつもりで電話した、とは言わずに電話を切った。






「あったか…」

思わず呟けば、普通じゃない?と銀八が返す。

「今まで冷たい所にいたから全然ちげー」

俺がそう言ってヒーターに手をかざすと、少ししてから銀八の体温が背中にくっつく。

ぎゅうぎゅうと抱きしめてくる銀八が高杉の耳元で低く甘い声を出した。

「ね、二人で温まろうか」

「ばか、何言ってんだよ」

くすぐったくて身を捻る。

温まるじゃすまねぇだろ。

銀八とするといつも激しくて、熱くて気持ちよくて堪らない。

快楽に溺れてしまうのはいつもの事だった。

正直耳元で囁かれる声すら腰に甘い疼きを与える。

きっとわざとやっているのだろうが。

「だめ?」

問いかける声は相変わらず低く響く。

その口元は僅かに笑みを浮かべていて、あぁ、やっぱりわかってやっているのかと悟る。

「…あとで、な」

応える声が無意識に掠れて、この分だと『後』はそう遠く無いと思う。

多分、二人共我慢がきかなくなる。

今脱いだら寒いから、もうちょっと温まってからシよ、と言うと、待ってましたと言わんばかりに銀八の口角がにやりといやらしく歪んだ。

その瞳には有り余る欲が揺らめいていて、俺の本能はぐらつき心臓が熱く高鳴る。

既に十分過ぎる程身体は期待で火照っていた。

「ね、高杉。どうしても『後で』?」

低く色づいた銀八の声が直接高杉の耳に熱い吐息と共に注ぎ込まれる。

「っふ、ぁ」

小さく声を漏らすと、それが気に入ったのか舌を執拗に耳の中に這わせてくる。

「、ちょっまて、って」

声が小刻みに途切れる。

おかしくなりそうな胸を押さえて小さく喘いだ。

耳に直接熱い舌がねじ込まれ、ピチャピチャとなる水音が高杉の羞恥を煽る。

たまらずにシャツの胸元をクシャリと握りしめると、その手の上に銀八の大きな手のひらが包み込むように重なった。

力の抜けた高杉の手をやんわりと外し、シャツの上から胸をなぞった。

「ンっ、」

「ね、これでもまだしちゃダメ?」

「…っぁ、え?」

囁かれる声に身震いする。

「ココ、こんなに熱いけど」

銀八の手のひらが既にズボンを押し上げて熱くなった高杉自身の輪郭をなぞるように擦りあげた。

「あぁっん」

急な強い刺激に抑える事の出来なかった艶めいた声が漏れた。

「ダメ?」

「…も、いぃからっ、はやく銀八…っ」

言い終わる前に強引に唇を奪われる。

それは本当に奪うというようなキスで、気持ちいいのと酸素が足りないのでどうしようも無く頭がクラクラした。






「やっぱ温まるじゃすまなかったじゃねぇか…」

事後、火照った身体で呟く。

ん?と聞き返してくる銀八が優しく高杉の髪を撫でた。

気だるい腰の痛みも甘く響く。

「あ、そうだ。高杉」

「…ん、」

先程まで行われていた情事のせいで声が掠れた。

そりゃああんだけ喉を酷使したら…と思いかけて思考を止める。

「こうやって偶に鍵を忘れなさい」

ニヤッと笑って命令口調の銀八の頭を叩く。

それでずれた眼鏡が間抜けで笑みがこぼれた。

「あ、でもその場合先生以外に連絡したら駄目だから」

しゃあしゃあと言う銀八にまだ言うかともう一発くらわしてやった。




そんな冬の日。








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