BSR

□Virurent-強伝染
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「Hey 小十郎。明日の朝は起こさなくていいからな。」
政宗が傍らに幸村を慕えて小十郎に声をかける。
明日の朝起こすな。今夜政宗と幸村が何をするのかなど暗黙の了解で、小十郎はただ
「分かりました、政宗様。」
と、それだけ言い頭を下げる。
それを聞くと政宗は幸村と肩を並べて自室へと足を向ける。幸村はあからさまな政宗の言葉に顔を真っ赤にし口をパクパクとさせていたが、政宗が歩き始めると慌てて小十郎に頭を下げ政宗の隣へと走る。
小十郎はその様子を微笑ましいと思いつつも幼い頃から守ってきた政宗を幸村に盗られてしまったようなそんな気分になる。
「大事な主人を盗っちゃって悪いねぇ、片倉さん。」
恐らく最初から其処にいたのだろう。屋根裏からひょこ、と佐助が現れる。
突然現れたにも関わらず小十郎は
「そりゃぁお互い様だろ。」
と平然と言う。
小十郎にとっての政宗のように佐助にとって幸村は大事な主人だ。一時休戦しているとはいえ以前は敵対していた勢力同士であり、当人同士が好き合っているとしても不安があるのは当たり前だ。あまり感情を露わにしない忍が相手でも其れぐらいのことは分かった。
「まぁねー。可愛い娘を嫁に出しちゃったようなもんだしねー。」
佐助は額から顎までのラインを象った面を外しながら言う。
「あーなんか寂しいなー。片倉さん慰めてよ。」
「あぁ゙?馬鹿言ってんじゃねぇぞ。」
戯けた佐助の言葉に小十郎は一括する。
忍、いや佐助はいつもこのような調子で相手を探るように表面上だけで話す。だから今回もいつものことだろう、と小十郎は思う。
が、
「冗談じゃないよ、片倉さん。ていうか俺が慰めてあげる。」
いつもと変わらない口調と表情で、しかし少し寂しそうに言う。
小十郎は佐助を睨み付けた後溜息をつき、向いていた方向とは真逆にある自室へと歩み始める。
「あれ?片倉さん行っちゃうの?」
佐助はその場で首だけを回し小十郎へと目をやる。
小十郎は着物の袖に腕を突っ込み腕を組むように交差させ、佐助を促すような体勢で言う。
「俺よりてめぇの方が心配だ。慰めてやるから酒でも持ってこい。」
佐助は一瞬目を見開き、しかし直ぐにいつもの調子に戻り
「はいはーい。分かりましたっと。」
と戯けたように言った。
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