BSR

□優美な新妻
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「片倉さんってお母さんみたいだよねー。」

唐突に佐助が言う。
「あぁ?何言ってやがる?」
「だって節約家だし料理上手いし心配性だし。当にお母さんの鏡だよね。」

今、二人は台所に居た。佐助は筒に息を通し火の強弱を調整し、小十郎は自分が丹精込めて作った野菜に包丁を入れている。リズミカルに刻まれる包丁とまな板がぶつかる音はどこか懐かしさを感じさせた。

「くだらないこと言ってねぇでさっさと息を入れろ。」
心配性は褒め言葉なのかという言葉を呑み込み、小十郎は佐助に指示を出す。
「はいはい、了解っと。」
佐助は下から小十郎を見上げて笑う。
と、

「声がすると思ったらお前か。何で居るんだ?」
声のする方を向けば戸口に政宗が寄り掛かっていた。
「何でって旦那が居るのにオレが居ない訳無いでしょー。」
いつものように軽く返しながら溜息を吐く。
「で?」
「はい?」
「何の話してたんだ?随分と楽しそうな声が聞こえてきてたぜ?」
未だ眠気が覚めないのか大きく欠伸をしながら問う。
「あぁ、それは」
「大したことではございませぬ。」
「片倉さんってお母さんみたいだよね、って話してたんだよ。」
小十郎の止めも虚しく、佐助はにこやかに笑いながらさらりと真実を言う。
政宗は軽く口笛を吹く。
「ham…確かに小十郎はmotherって感じだな。」
「政宗様…。」
小十郎が溜息を吐くのと裏腹に佐助は嬉しそうに言う。
「ほらー。言った通りでしょ、おかーさん。」
「誰がお母さんだっ!!」
「照れるなよ、お母さん。」
佐助も政宗も調子に乗って『お母さん』と連呼する。
しかし、いつまでも小十郎がいいように言われている訳が無く、
「いっ…いい加減にせんかっ!!」
とうとう堪忍袋の緒が切れた。
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