□ツバサ
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目は閉じている。
目蓋の裏で少女と逢う。その子は白いワンピースを着ていて。私に微笑みかける。庭を駆けるその子の白い腕が、翼に見える。翔べる。何処へでも。私は熱いなみだを流す。その子は泣いた。私の翼を貴方にあげると泣いた。
そこでブツンと切れて、世界が暗転をする。
目蓋の裏で女性と逢えた。座り込んでしまう私へ駆け寄って来る。羽ばたけずにいる私の翼をあたためようとする。伸ばされた白い腕が翼に見えて。私は熱いなみだを流す。そのひとは泣く。私の翼を貴方にあげると泣く。



目を開ける。
軍服の青に包まれたリザの腕が、私からシーツを奪ってゆくところだった。未だ夢の続きをみているのか、青いその腕が翼に見えた。
ブルーバード。
夢の中で過去や未来に探しに征くのだが、結局のところそれは最も手近な処に在ったという物語。死と生命の意味を主題としたそれに、きっと似通っている。

私は目覚める。
もう一人きりじゃ飛べない。

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