□船内恋愛
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もう逃げられない。告げたらこの関係がくずれてしまいそうでこわいから、なんてありふれた言い訳を私までこの先もしていくことはできない。私はつよい。そんなのは私らしくないから。
今、ここで。はっきりと自分は誰をすきなのかを伝えなくちゃ。それで、たとえ誰かが傷ついても。



「私はサンジ君がすき」

生まれて初めての告白。
すきだと言ったらサンジ君はどんな表情をして、どんな反応をするのかなと何度も考えてきた。だからこそ。その瞬間のサンジ君だけを、目に焼き付けるつもりで見ていたかったのに。

すきだと言った瞬間、私の目に一番にはいったのはルフィのすごく傷ついた表情だった。このだいすきな船長を、私はよろこばせたいのに、どうしてうまくいかない。そして私にとってルフィは"だいすきな船長"でしかないことを、また知る。


「ルフィ!」

待って欲しいと名前を呼んだ。

走り出していて立ち止まりも振り返りもしてくれない。私も後を追って走り出す。

私がどこかで捨てきれなかった期待は、残酷だった。ルフィなら。笑顔で祝福をしてくれるんじゃないかと期待をしていた。シシシと笑う姿を簡単に想像できるのに。


「ルフィ、ねぇ、待ってよ!」

走っても走っても追いつかない。追いつくどころか、距離はひらいているような気がする。物理的にも心理的にも。遠い。


息を切らして立ち止まる。
荒くなった息を整えていると、後ろからゾロの声。


「ルフィを追うふりをしてコックから逃げて、結局はルフィも諦めて自分に言い訳か」


するどく睨みつける。けれどすぐに、睨む価値も無いと判断をする。だってそれでは、図星をつかれて怒っているようだから。認めたくない。


「…船長を傷つけた私を許せない?」

「…コックとビビ、2人きりだぞ」

「…!」


焦るのは、ビビがサンジ君をすきだから。サンジ君が、すきな子以外に「キライ」と言う男性じゃないから。

すぐに引き返そうとして、ルフィの姿が頭を過る。今そばに居なきゃいけないのは誰なんだろう。放っておいていいものはあるの。

みんながみんな、しあわせになれたらいいのに。


このままルフィを追うか、サンジ君の元へ引き返すか。悩む私の腕をつかんで。

「おれの方がおまえを幸せにできる」


なにを言っているのかと目を見ると、ゾロの瞳のなかの私は迷っていた。
迷っていた。

どうしたらいいのか、もうわからない。
 

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