darkBlack×pureWhite


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キーンコーンカーンコーン

6限目終了の合図が、此処、
並盛高校の校舎に鳴り響く。
生徒たちは1日の授業を終え、颯爽と
帰る支度を整え、HRを待ちわびている。

私は萱島柚葉。
並盛高校の一年生。

この高校に入学して早半年。
私には、好きな人ができました!

相手は同じクラスの沢田綱吉ことツナ君。
どうして好きかって、とにかく、可愛い。

吸い込まれるようなブラウンの瞳に
思わず触っちゃいたくなるツンツンヘアー。
太陽みたいに暖かい笑顔に、
不器用なりに人を気遣う優しさ。

ダメツナとかみんなには言われてるけど、
そんなとこもかわいいから大好きなのだ。

…うん。
片想いだってトコには触れないでおこうか。

でも最近、ツナ君と話す機会が増えたような気がする。
授業中に、分からない問題を教えあったり、
ノートの切れ端を使って手紙交換したりしたいけど、
残念ながら席が離れてるから、それはない。

でも、夏休み前と比べると格段に
目の合う回数や、話す回数が多くなってるのが分かる。


「柚葉ちゃん」


噂をすればなんとやら。
ツナ君は、6限目返された夏休み明けテストの
答案用紙を握り締めて、話しかけてくる。


『どしたの、ツナ君?』

「さっき返ってきたテスト、その…何点だった?」

『さっきのは…85点!』

「んなっ、柚葉ちゃん頭いいんだね!いいなぁ。オレなんて18点だったよ…ハハハ…」


赤ペンで歯切れの悪い×印が盛大につけられた答案用紙を
ツナ君はため息混じりに広げて見せる。
これは…もしかして、もしかしなくても、
ツナ君との距離を縮めるチャンスかもしれない!


『ツナ君、私が勉強教えてあげようか?』

「えっ?い、いいの?」

『もちろんっ』

「う、嬉しいよ。ありがとう柚葉ちゃん…」


そういってニッコリと笑うツナ君。可愛い。
まさに天使の笑顔だわ、これは。


『じゃあ、放課後ツナ君ちで勉強会とか…どうかな?』

「え、オレんち?!」


ハッとしたように動揺の表情を見せるツナ君。
ちょっと、いきなりつっこみすぎただろうか…


『えと、ダメ…?』

「…………、だ、ダメだ!
オレんちは…ちょっと事情があって……。ごめん。
その、柚葉ちゃんちに行ってもいいかな…?」

『?……うん、もちろんいいよ』

「ゴメンね、ホントに」

『ううん、気にしないで!』


相当焦った様子。そんなに動揺する事情があるのかな…。
ツナ君ち、行ってみたかったけど…
事情があるなら仕方ないか。

ううん、むしろ、いきなり家行っていい?とか聞かれて
引かれなかったことに感謝すべきだよね。

私って、ふと思い立って言ったことなんかが
後から思うと、すごいこと言っちゃってたりするから
後悔すること、多いのよね。
もう少し自分の言動、気を付けないとなぁ…。

頭の中でこんな反省会が行われているのに反して、
私の鼓動は、遠足前夜の子供のように
緊張と期待で、大きく高鳴っていた。



−放課後−



『着いた!ここが私の家だよっ』


いつもなら一人で歩く帰り道。
隣に一人誰かいるだけで、こうも緊張するものだろうか。
無論、その相手が綱吉君であることも深く関係してるんだろうけども。
むしろほとんどそれが原因なんだろうけども!

頭の中が破裂しそうで帰りの道中、何を話したか
まったく覚えていない。勿体ない…。


「わぁ…。思えばオレ、女子の家に来るなんて初めてだよ…」


え、そうなの?
実際そんなこと深く考えたことなかったけど、
改めてそう聞くと、ちょっと…嬉しいかも…。


『ま、とりあえずあがって?』


あくまで冷静を装って鍵穴に鍵を差し込もうとするものの、
身体は正直なもので、カタカタと震えて中々
鍵穴に入らない。

止まれ!落ち着くんだ!私の手!!


ガチャッ


…約1年分の勇気を使い果たし、何とか鍵を開錠することに成功。
よくやった、私の手。


『ただいまー』

「お、おじゃまします」

「お帰り柚葉ー…アラッだぁれその子?柚葉の彼氏?」

「んなッ//」


赤飯炊かなきゃ!なんて言ってはしゃぐお母さん。
予想はしてたけども…(笑)


『ち、違うよ!友達!今から部屋で勉強するの!』


…肯定したいのは山々だったんだけどね。
所詮は友達かぁー…、と当たり前のことで少ししょんぼりしてしまう。

こ、これからなんだから…!!


「あらそうなの…。なら、あとで飲み物持って行ってあげるわね」

『うんありがと。私の部屋行こ?ツナ君』

「う、うん」



−−−−−−−
−−−−−
−−−



私達は勉強は程々に、話したりゲームしたりして過ごしていた。

いや、ちゃんと勉強もしたよ?
ただそればっかりだとウンザリしちゃうから
休憩がてらにゲームしたりうんたらかんたら…。

そして気づけば時計の針は22時を指していた。


「あ、やばッもう帰らないと!」

『ほんとだ…。送ろうか?』

「いや、いいよ大丈夫!危ないし…」

『帰り道わかる?』

「うん。山本んちがこの辺りだからよく来るんだ」


そういって荷物をまとめるツナ君を、玄関まで見送った。
楽しい時間は過ぎるのが早いなと思うと、寂しくなった。


「じゃ、また明日ね柚葉ちゃん」

『うんっ気をつけて帰ってね!』


名残惜しくて、家の玄関先からツナ君の後ろ姿が見えなくなるまで
ずっと目が離せなかった。

自分の部屋に戻ると、ツナ君との勉強で使ったルーズリーフが
数枚机の上に広がっている。
そこには、私の文字で書いた問題に、ツナ君の字で解答が記されている。
ひと時でも、確かにこの部屋で二人で過ごしたことを物語っているようで、嬉しかった。

ふと、部屋を片付けていて、気がついた。


『あっこれ…ツナ君のケータイ!?』


机の隅に転がっていたツナ君のケータイ。

明日学校で渡そうか?
そうは思ったが、ケータイなんていつ使うかわからないし
ひょっとすると今晩でも、ないと困るかもしれない。

しばらくその場で悩んでいたが、
念のため届けに行くことに決めた。

季節は10月。
夏も終わり、夜は少し肌寒さが目立つようになってきていた。

私は颯爽と上着をはおい、外に飛び出した。
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