Sacred Vampire of Crescent.

□Not visible without love.
2ページ/14ページ


「教えてやるよ。姫はな…
姫の為に命を落とさない事を誓う
姫より先に命を落とさない』事を誓う事で…
姫のための戦いで命を落とさない守護』と『そうならないだけの強さ』を与えてくれるんだぞ、と。
特に後者は…相手が強きゃ強いほど…わかるな、と」

「……!」

ここにきて、ツォンが初めてひるむ。
レノの言う能力のヤバさが解ったからだ。

戦いが始まってから、二人も相手にしているのに余裕を貫いていたツォンの表情に、ようやく焦燥が浮かんだのだ。


【吸血姫のために命を落とさない守護】はつまり姫のための戦いにしかレノは身を投じないのだから、戦闘中死ぬ事がないという事になる。

【吸血姫のために命を落とさないだけの強さを得る】という事は、いくら実力差が大きくてもそれを圧倒的に覆されるということだ!
レベル1の敵と遭遇したと思った瞬間、そいつがいきなりレベル100に跳ね上がった、ようなもの!

例えツォンが何かしらの奇跡を起こしたとして、それによって上がった勝機の分だけレノもまた強くなる!
そして姫の使い魔である以上、恐らく、いや絶対にルードも同じ契約内容なのだろう。

レノ一人にさえ焦燥するのにルードまで加わってしまったら、ツォンにはもう、どうすることもできない。


「んで追いうちに…姫は不老不死だぞ、と。
つまり優しい姫は、俺がずっと姫と一緒にいてくれって事で…契約というより約束を交わしたんだぞ、と」

「な…!」

不老不死の主より先に死なないという事は、死と言う定義を奪っているも同義。

「それだけの巨大な加護…しかも、二つの重複契約…!」

そんな事ができるのは、まさに最強の吸血姫のみ!

…レノが急に途方もなく強く思える。
そしてそれは残念ながら…当たっているのである。


(契約って…それかよ!)

シドは相変わらず邪魔にならないようにしながら口をあんぐりとしていた。

(ツォンってやつの契約内容は確かに噂どおりにエグイけどな…。ヴィンの奴、なんだかなあ…)

人間であるシドにとっては命の危険さえあるこの戦場で、彼は微笑んでいた。

ヴィンセントがそういう残酷な契約を結ぶわけがないと信じていた頃がある。
だが、吸血鬼の頂点なんだからと勝手に契約について恐れていた時期もあった。

『契約?ああ、していたかもしれないな…』
そんな言葉に脱力してしっかりしろよと言った時もあった。

呆けていたわけではない。

ヴィンセントは本当に契約したつもりがなかったのだ。


ただ、純粋に、その優しい心のままに約束を交わしてくれと言っただけだったのだろう。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ