Sacred Vampire of Crescent.

□Coincidence of ideal.
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「まあ、こうしていつも美味しい食材を美味しい料理で満足に頂いておいてなんだが、私はやはり血以外は栄養にならないのでな、皆と美味しい料理を楽しむために参席しているようなものだから…」

「あ、そこは普通に吸血鬼か…」

吸血鬼はやはり、血しか栄養にならない。
人間の食材が害毒になることは決してないが、それだけの生活ではやはり栄養失調になりかねない。

それは例えるならば、毎日ダイエットしてこんにゃくや海藻しか食べない女性の様なものなのだ。
ダイエットには適度な栄養をするようにと医者も言う位だから、吸血鬼なら「こんにゃく生活もいいけどしっかり血液摂取しなさいよ」となってしまうわけだ。

人間からしたらハンバーグ、ステーキ、ピザ、カレー、ラーメン、ハンバーガー、ジュースを一日何トン食べたとしてもカロリー0なのだから大変羨ましい話だ。


「食事をすれば皆に会える。楽しく過ごせるし皆の元気な顔も見る事ができる。私の一日で満たされた時間だから…」

頬を染めながら恥ずかしげに言うと、皆がコーンスープに涙を注いでいる。
本来ならそんなことをしたら怒りだすだろうインヤンもそんな有様なので誰も止めはしない。


「あれ、でもお前…血なんかいつ摂取してんだ?」

シドが普通の疑問を口に乗せる。

ヴィンセント・ヴァレンタインと言う吸血鬼は滅多に屋敷からでないし、この屋敷に純粋な人間はシドしかいない。
レノ達も人間ではあるが、毎日吸血されたら身がもたないだろう。

だって、外にいる頃のシドの知る吸血鬼は平気で数人を襲って空腹を満たそうとするし、まあそれは滅多に人血にありつけなかった彼らの食べ込みの貯蓄の様なものもあるから仕方ないのだが、毎日少しずつ飲む吸血鬼だって、やはり人一人は殺してしまう位に吸血する。

「ああ、それは…」

ヴィンセントが言おうとすると、丁度インヤンが
(そうでした、姫、そろそろ摂取しないと)
とばかりにジュースの紙パックの様なものを持ってくるのだ。

その紙パックは牛乳のように白くて、真ん中に赤十字が書かれ、横には可愛らしいキャラクターが書かれている、どう考えても「お手製輸血パック」だった。

ヴィンセントはそれにストローを通し、美味しそうにちうちうと可愛らしく飲んでいる。

「姫はこうやって定期的に血を飲むんだぞ、と」

「…本来なら人一人は殺してしまいかねないのに姫はよく我慢なさっている…」

「…紙パック…どう見ても足りねぇよな…」

くぴくぴ…

「大丈夫…。私、これを定期的に足りるだけのんでいるから…////」

ヴィンセントが言う。

(姫はこの紙パックをお好きな時にたまに飲んでおられるんです。ニブルヘイムの町医者に会った事はありますか?彼が有志の方々から血を募って姫に売って下さるんです…)


それにしても、紙パックジュースをちうちうくぴくぴと小さなお口で可愛らしく飲むヴィンセントの、なんと可愛らしい事だろう。


皆、完全に表情筋を弛緩させてデレデレとにやけていた。
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