Sacred Vampire of Crescent.

□Princess of mercy, and merciless man.
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「…ありがとうルーファウス。私たちはそろそろ出て行く事にするよ」

「ああ、是非また立ち寄ってくれ」


あの騒動から約一月後。

ヴィンセント達は、この町はこれでもう大丈夫だろうと確信をしたから、そろそろお暇する事にした。

別れ際、ルーファウスはどこか寂しげな表情をしたけれど、気付かれまいと気丈に振る舞っていた。

カームの街方面から飛空挺が飛び立つのが見える。

それを見降ろしながら、ツォンはルーファウスに呟く。

「…よろしかったのですか?」

「…何がだ…」

ルーファウスは静かに俯きながらつぶやき返す。

「姫は…ルーファウス様の…」

「…ツォン。姫は本来ならばこの街に来て下さらなかったかもしれない…。だが、奇跡は起きた。あのお方のお姿を再び拝見する事が出来…、私の過ちを正してくださった。…それで、十分なはずだ…」

「ルーファウス様…」

初恋の人を、このまま見送る。
それは、心が強くなければできる事ではない。

しかも、まだ、その恋心を諦めていないというのに。

「さあ、一日でも早く姫が再びお越しになっても恥ずかしくない街にしなくてはな」

「…我々も尽力いたします」

本当は、ついていきたかっただろう。今度、いつまた出合えるのかわからないのだから。

だが、ルーファウスはヴィンセントとの約束を果たそうと必死になって善き領主となるために頑張っている。

(今の私はまだ…あのお方に相応しくない…)

この町を再興し、善き領主として今度こそ街を笑顔であふれさせる。

それはとても大変で過酷な事だとは十分に理解している。
過去を清算し、周辺の街と手を取り合うのも簡単ではないし、一度は虐げてきた街の住民たちの心を信頼でまとめるのも、とても大変だろう。

それでも、ヴィンセントと約束し、やりとげてみせると誓ったなら。

ルーファウスは今日も、復興のために陣頭で指揮に当たった。










「ツォンさん、イリーナも…しっかりとアイツを支えて行くんだろうな、と」

飛空挺でレノが呟く。
そう、あの街はタークスにとっても再会と和解を果たした大切な時間を与えたのだ。

「…俺達が使い魔になった成り行きも話したりして…懐かしかったな、と」

レノが、一度飛び立ち空ばかりの窓の外を見上げながら、呟いた。
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