Sacred Vampire of Crescent.
□Nocturne which fantasy plays.
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銀の弾丸が全く平気。
そもそも素手であの速度の弾丸を止めてしまうなんて。弾丸を握りしめたその手は白く、細く、目の前の幻想じみた美しい美人が何者なのか。
ルーファウスが「姫」と呼ぶまで解らなかった。
「き…吸血姫…だと?」
「ミッドガルに入り込んだ客人とは、姫だったのか!」
「…ルーファウス、わかってる…」
ヴィンセントは研究者たちなど全く意に介さず、ルーファウスを抱きしめる。
「な、ヴィ…姫!」
顔を真っ赤にして子供のように慌てるルーファウス。どうやら予期せぬ行動に素直に驚いてしまったようだ。
「…もう、一人で無茶しなくていいんだ…。私には、真実が視えたから。…ルーファウスが一生懸命頑張っていたんだ、って、わかってるから…」
ツォンもわかってくれているよ。
レノ達は…どうだろう。でも、説明すればわかってくれるよ、きっと。
街の人たちだって、きっとわかってくれる。
私は、貴方を信じているから。
ルーファウスがヴィンセントの心に氷を解かされたようなと言ったとしても、それはきっとオーバーではない。
一人で頑張って、背負って頑張って、彼の心には、永久凍土のように凍てついてブリザードが吹きすさぶほどだっただろう。
だが、今なら彼の心は雪解けの春を迎えた様な穏やかさに包まれて、ルーファウスはヴィンセントに抱きしめられたまま隠すように涙を浮かべた。
「ルーファウス、ここは私に任せてツォン達に顔をみせてやってくれ…」
「いや、しかしこの場を治めなければ…」
貴方に牙を剥き使い魔を傷つけた。
せめてこの町の事は自分で片を付けなければならない。これ以上、迷惑はかけられない。
「でも、二人とも貴方を心配していて…」
ちょこんと可愛らしく言ってくるヴィンセントに、本当に王族なのかとルーファウスは頭痛を抑えた。
…今まで散々その荘厳な威圧感や強さを見せつけられて、疑いの余地などないのだが。
結局ルーファウスは一旦無事を確認させるためにツォン達の所へ戻った。
当然、彼らを引き連れすぐにヴィンセントの所へ向かうつもりだった。
「ルーファウス様!ご無事で!」
「ヴィンセント様、ちゃんと守ってくれたんですね!」
「お前たちには…危機から遠ざけるつもりが、心配をかけてしまったな…」
苦笑するルーファウス。だがツォンもイリーナも安心に表情を緩ませていた。
「ご無事を信じておりました」
「姫の所へ行くのでしたら我々も共に!」
契約に縛られて生きたのではなく、二人とも自分の意志でルーファウスを慕って来てくれた。
その心が伝わってくる。
「今夜は、夜空がいつもより透き通っていて…より幻想的だな」
今にも、夜想曲でも聞こえてきそうな位に星が天に散りばめられた夜空。
原因は今夜に限って全工場を止めたからなのかもしれないが、ルーファウスは、今だけでも姫が照らす希望の未来の魔力なのだと信じたかった。
そう、ヴィンセントが戦い奏でる夜想曲は、きっと、何ものよりも幻想的で輝かしくて、優しい黄金色で、誰の心にでも透き通って浸透していくのだろう。
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