Sacred Vampire of Crescent.
□Monarch of a despotic state.
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シドは警戒していた。
食事も慎重に取ったし、何よりこの城の中の何者も信用するつもりがなかった。
(ダチの事がなけりゃ…。それでも好きにはなれそうにない街だけどなぁ…)
空と大陸。人間が行ける所も行けない所も自由に踏破した彼にとって、この街の閉塞感は吐き気すらしかねないほどだった。
(…ヴィンがいってたな。『井の中の蛙、大海を知らず。されど、天の高さを知る』…)
世界は果てしなく広い。
この町と違って不自由はあるが、それでもいい場所も悪い場所もある。
突然の夕立に襲われる事もない、突然の地震に襲われる事もないこの町は、確かに住みやすい環境なのだろう。
だが、生きているという感覚を奪われていくようで嫌だった。
夕立は盛大に濡れるけれど、この星に生きてるなー!というある意味の解放感や生きている実感を得る事が出来る。
何もかもが揃い、何不自由なく、雨も降らず風もなく有害なウイルスもいないこの街は、生きているけれど、生かされている束縛感を感じるだろう。
「…シド?」
「ん!ああ、どうしたヴィン…」
どこか浮かない顔をしているシドを心配に感じたのだろう。優しい姫は不安そうにシドの顔を覗きこんでいた。
「どこか体調が優れない…か?」
「いや、そんなこたぁねーぜ、おう!」
「そうか…?では、私はそろそろいくよ…」
ヴィンセントが席を立つ。
そういえばこれから謁見だったな、と思いだす。
「一人で大丈夫か?」
「姫を誰だと思ってるんだ、と」
「い、いや、その、まあ…」
今しがた部屋を出て行ったお方が最強の王族の中でも突然変異でお生まれになった超最強な吸血姫だとは知っている。
だから、いざ戦闘になった時の事は大して心配していない。
だが、吸血鬼は美しいほどに強い。
ヴィンセントの普段の可愛らしさ、そしてあの美しくて儚げで細い体つきなどを見ていると、どうもそこら辺を忘れてしまうのだ。
「ヴィンの親父さんが領主の知り合いだってなら、心配のしすぎか…?」
シドは首をかしげて、だがどこか納得のいかなさそうな顔をしていた。
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