Sacred Vampire of Crescent.

□Ring of Uroboros.
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「わあ…////」

ヴィンセントが朝起きると、大きな飛空挺が広大な庭先に停泊されていた。

そんな様子に驚き、初めて見る物に対しての好奇心がくすぐられ、ヴィンセントの紅の瞳は嬉々として輝いていた。

「おう、お待たせヴィン!これが昔俺様が世界を飛び回るのに使っていた飛空挺よぉ!中に操縦のパイロットも数人いるけどな、何せ何年ぶりだ…掃除に整備にパイロット募集…なんだなんだで一カ月位かかっちまったってわけよぉ!」

「凄い…凄いな、シド!」

一か月もかかってしまった理由を手短に説明しているとヴィンセントが感極まってシドに抱きつき、屋敷中の皆さまの視線が羨望と殺意で痛いのでシドはデレデレしながらも優しくヴィンセントを一瞬だけ抱きよせて離れさせた。
ちゃっかり、抱きよせている辺りは見せつけだ。
人間にしてはすごい事をやってのけたんだから、この位の褒美は頂かないと。


実際、ヴィンセントと世界を回る約束をしたシドは優雅に皆と日々をエンジョイしているように見えてかなり多忙だった。

昔、共に飛空挺を操縦してくれた仲間がもう一度集まればよし、無理なら現パイロット並みの技量の人間を教育する。タイニーブロンコ…そこまで高望みしなかったとしても、せめてヘリ位の操縦技術はないとマズい。

飛空挺はパイロット一人ではどうにもならない。色んな計器をいろんな人間が持ち場について徹底的にに完璧に管理してやっと空へと飛立つのだから。

真っ先にパイロット急募のチラシを知り合い経由で近隣に回し、自身は飛空挺を休ませてある故郷のロケット村へ。
そして何年も操縦されなかった事による相棒を皆でぴっかぴかに磨く。

「どうした、シド。急に帰ってきて…」
本当に心配し続けてくれた者。

「なんだ?吸血鬼は諦めたか?」
シドをからかう者。

「またパイロット復帰か?」
昔の彼に羨望していた者の希望のまなざし。

色んな反応があったけれど、『無事に吸血姫を見つけて、世界旅行スケールのデートをする事になった』と大仰に言ったら、皆仰天。
何せ再び「この村から飛空挺に乗り飛び立つ伝説のパイロット・シドが拝める」というニュースに村中の人間が協力的に整備を手伝ってくれた。

運よく彼に憧れたままにパイロットとしての技術を磨き続けた青年がいたら、今回連れて行ってもらって、あわよくば姫を見る事が出来るかもしれないという下心も存在する奴もいるが。

なんにせよ、村中が手伝ってくれたので整備や点検、手入れは予定の半分ほどの期間で完了した。

その位になったらちらほらと求人の呼応もあったので、シド自らが面接だ。
面接と言っても見たいのは技量と他のパイロットとの連携ができる協調性だ。流石に昔のパイロットもシドと同時に辞めてしまった者も多く、技術力が落ちてしまっていたりして過去の栄光オールスターとはいかなかったが。

姫やシドが見たいという邪悪な下心の奴は見ればわかるので面接もすることなく即刻退去してもらった。

シドに憧れてパイロットとして研鑽の途中という有望な若者もいたりして、そういう卵には是非今回の旅で新しい何かを掴んでもらおうと積極的に採用した。

パイロットを目指して空を夢見るばかりで力を付けたくてもがいていた頃の自分の姿が重なって見えたのかもしれない。
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