Sacred Vampire of Crescent.

□Not visible without love.
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「ところでイリーナ、どうした?」

「あ、そうそう!ルーファウス様から言伝で…」

イリーナが口を開いたその時、イリーナ達の背後の扉が開き、ヴィンセントが現れた。

流石にツォンとイリーナがその美貌に硬直している。

主であるルーファウスも相当な美形なのだが、ヴィンセントの場合、美形では収まらずまた彼とは美しさのベクトルが違うのだ。

女性よりも遥かに美人。
もう、比べる存在がない位に。

吸血鬼の強さは生まれつき。ルーファウスの使い魔になる際も二人はその容貌に驚いたが、でも、これは…。感想さえ上手く出てこないほどの美しさ。



「…?あれ、戦っていないのか?…ルーファウスに嘘つかれたのかな、私…」

しゅんとする姫ちゃまに、皆で一斉に突っ込みをいれた。


「この部屋の惨状見てから言えよヴィン!」

ツォンの体術はスマートだが、それでも人間を超えた者たちが三人で大暴れしたのだ。

レノが埋められかけた壁は大穴があいているし、ルードがツォンを弾いた床にもクレーター。
レノがツォンに弾かれ壁を貫いた電磁ロッドの電流も僅かながらにまだ帯電している。

一体このお姫ちゃま、どこを見ているのか。これらを視界に入れてからの発言だとしたら、余りにスケールがでかすぎる子だ。

「姫、見知らぬ顔が二人もいるはずだぞ、と」

ツォンはひょっとしたらヴィンセントと顔を合わせた事があるかもしれない。プレジデントの使い魔であった彼は、主を守るため常に傍らにいた。

今もそうではあるが、要はヴィンセントを見ている可能性は大きい。それでも数百年ぶりのその美貌にはたまげているツォンではあるが…。
でもイリーナには会った事がないと思う。

だが、皆にそんな事を言われてきょとんとしているヴィンセントは、多分吸血鬼で一番頭脳が明晰だ。


「そう、ルーファウス様に、もう戦う必要がないから場を治めて来いって言われてきたんですよ私」

「そうだったのか…」

「でも、慣れない城内走った姫が、ショートカットしまくった私と大差ない到着って何かショックなんですけど」

「え?あう…」

ヴィンセントが申し訳なさそうに俯くと、イリーナはレノとツォンに軽く小突かれていた。



なんだか急にほのぼのしてきた。

戦う理由が消えて失せたなら、彼らは懐かしい仲間の再会なのだ。
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