Sacred Vampire of Crescent.

□End of Longsleep.
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「このニブルヘイムの先に山があるのは見えたでしょう…。そこへ至る最中、森に入るのですが…」

伝承を学ぼうとする者なら知っているだろう所から話は始まった。

「そこの呼称は【1000日の森】や【幻想の森】…
読んで字の如しですよ…。山へ向かうのであれば森はすぐに突き破る事が出来ます。半日かからないでしょう」

山越えする旅人には難なく道を教える事が出来る理由の一つである。

「しかし、森の奥深くを目指したら、何度も何度も同じ場所を巡らされたように方向感覚を失われ幻想に包まれ、1000日どころか、生きて帰ってきた方も僅かですよ」

「…不思議な力でも働いてんのか?それとも単に方位磁針がきかねぇのか…」

「さあ…。例えば父から聞いたんですがね…。
昔父の話を聞いて森に挑んだ人間が一年間に数百人以上…。しかし目的を果たせず諦めて帰ってきた人間がわずか一人。
しかも精神をズタズタにされる程の恐怖でも味わったのか、言葉は通じずうわ言ばかり、出発前の黒髪は白髪にとって代わり、顔は若者だったのに末期病の患者の老人のように痩せこけガリガリになって…。
そしてそんな彼も…ついに森の入口で発見されてから一日で死んでしまいましたよ」

「…よせやい…;」

シドは勘弁してくれと言いたげに手を払った。
怪談を聞きに来たのではない。


「それが、貴方の目指す森の正体なのですよ」

「だがここまで来てあきらめられねぇぜ!」

「…そう、ですか…覚悟はお堅いようですね」

主人はシドの目を見て、決意の堅さを理解する。そして懐から不思議な光沢を放つ袋を取り出した。

「シドさん、せめてこれをお持ちください」

主人が中身を取り出すと、きらきらと光る石だった。

「これを目印に地面に撒いて進んでください。日中、太陽の光を浴びて光る石です」

「いや、だが日も当たらねぇ森だってあったぜ」

「…!…そう、ですか…」

実際に踏み込んだ事のない主人は、当然森の様子を知るはずもない。
親切心での提案だったが、それでは役に立てそうもない。

「だが、あんたの気持はもらっておくぜ。なぁに、必ず生きて帰ってくるさ!」

「宿を手配しておきますから、もし今から村や外を出るとしても、月が出る前に宿屋にお戻りくださいね…」

「おう、親切にどうも!」

シドは、欲しい情報を全て主人から聞き出す事が出来たため、明日に備えて軽く入口だけ。

そんな気持ちでニブルヘイムの森を進んでいく。


木に傷をつけて目印とし、背後をたまに振り返り、ニブルヘイムの村が視界にある事を確認しながら。
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