長編小説

□出稽古
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安政七年



江戸城桜田門外で大老井伊直弼が暗殺された。



「鶯が鳴きましたよ、土方さん」



「ああ、だからどうした。」



「はたきが手元にないのは残念ですねぇ」



春の陽気が漂う田圃道。
畑の側に芽を出したつくし、ふわりと香る春の風…







不穏な雰囲気の漂う時勢ではあるが、ここは平穏そのもので、微塵も時代が動いているような素振りがない。寧ろのんびりし過ぎていて、退屈さえ感じる毎日である。
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