香りにまつわる短編集

□恋愛的短編
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 俺の嫌いなもの。

 1、甘いもの。
 2、可愛いもの
 3、女。
 そして何より。


「ねー。敦也ぁー?」
 俺の隣にいる、俺の嫌いなものを全て持ちそろえている女、飛鳥。
 この甘ったれた声も。
 いつも身に纏う甘い香りも。
 世の男が可愛いと賞賛する仕草も。

 何もかもが俺を飛鳥拒否反応へと導く。


「なんでお前っていっつも俺に絡んでくるわけ?」
 うんざりして、眉間に力を入れて、飛鳥に問いかける。
 すると飛鳥は俺の頭に手を伸ばし、額の皺を両手の親指で伸ばしながら顔を近づけてきた。
 飛鳥のつけている香水の甘さが、やけに鼻につく。
「なんで敦也ってそんなに飛鳥が嫌いなわけ?」
 にやりと唇の端っこだけで笑いかける飛鳥の笑顔は、いつもと違って甘くなくて。一瞬、息をのんだ。

「敦也ってさ、女の子女の子したのがタイプだと思ってた。違うんだね」
 耳元でそっと囁いてから、くすりと笑みをこぼす飛鳥に、俺の心臓の鼓動がいやに響く。

 なんだこいつ。全然甘くねぇ。

「ま、敦也の好みを演じるのも疲れたしね」
 からからと笑って肩をならす飛鳥の言葉を受けて、俺は顔が熱くなるのを感じた。
「あれ?敦也、あたしのこと気に入っちゃった?」

 女って恐い。飛鳥を見ていてつくづく思った。
 やっぱり飛鳥から漂ってくるのは甘い香りだけど。
 なんだかそこまで嫌いじゃなくなっていた。





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