連載終了後
純血種×英
若干ネタバレあり







その男は懲りもせず、やって来た。



「また来たのか、英」

「何度だって来ますよ、あなたが納得してくださるまで」




いつからだったか、この世に生きる純血種は年々減っていく。

ある者は永遠にも近い寿命に嫌気がさして。

ある者は狂気に走り消され。

またある者は大切な者のために。



そうやって少しずつ、わたしの周りから同族が消え、残ったのはわずか。




「何度来ても同じことだよ、わたしの気持ちは変わらない」

「僕の気持ちも変わりません」





そうやってゆるゆると時間は流れ、わたしと言えばこの躰に嫌気がさすわけでもなくかといって狂気に呑まれることもなく、こうして生きていて。

ただ、何もせずのんびりと生きることが苦痛と感じないわたしはまだ世界の真実を知らないのだろうか。

ただ、わたしはここに生きていて。






そんな折、わたしの元に来たのは貴族階級のヴァンパイア。

何度か見た事のある男で。




「わたしには、必要ない」

「っ、どうして、」



彼は、世界を変えた玖蘭の事件以降、どんな理由かは知らないがヴァンパイアを人間にする研究をしていたらしい。

そしてはたまたどういうわけかそれをわたしにも与えるためにここに来た、と。





「わたしは純血であることを嫌だと思ったことはないよ」

「こんな場所にひとりでいて、淋しくはないのですか」

「それを苦痛だと思ったことはないよ」





彼は何度、幾ほどの月日をここで過ごしただろう。

始めに断ったあの日から彼は懲りもせずここに来て、わたしの戯れに振り回されたり、また他愛ないはなしをしたり。




「英は頑固だ」

「あなたこそ」



キレイな金髪を撫でれば、少し顔を赤らめる英。

貴族階級のヴァンパイアとしては彼はなかなか長生きしているほうだと思うのにこんなところは少年のようだ、と、何度思ったことか。





「ヴァンパイアを人間にする、“治療薬”だと言ったね」

「……はい」

「それではヴァンパイアは病気みたいだ、」

「!」

「化け物を治してやると言われているようだよ、わたしはこの血を疎ましいと思ったことはないのに」



ゆらゆらと光の灯った瞳を見つめてそう紡げば彼は苦しそうに眉を下げて。





「……あなたを、慕っています、」



されるがままだった英が、初めてわたしの手をとって。

紡がれたのは告白じみたそれ。





「僕はただ、あなたを遺して死にたくないんです。ただ、それだけです」






そう言ってわたしを抱き寄せた彼に心が揺らいだわたしは、いつの間にかこの男のいる日常が心地よいものになっていたことに初めて気付いた。







ほんとは好きでしたなんて、そんな今更
(あなたと同じ時を生き、あなたと共に朽ちたかった、)






何かありましたらこちらからどーぞ。



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