誘惑蜘蛛 book
□誘惑蜘蛛
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消えてしまった彼女を、見つけてしまえば。何かまた、変わったのだろうか。
「名無しさん、元気にやってっかな」
「しっかりしてましたけど、心配は心配ですよね」
「探すべきなのかな」
「探されたくないからマンションにも戻っていない、と考えるのが普通でしょうねぇ」
卒業式の日。4人の元にはそれぞれメールが届いた。内容は、今までの謝罪と感謝。貴女はこうなることを望んでいたんだろうか。
卒業と同時に消えてしまった彼女は泣かずにいるだろうか。
彼女が、僕たちのことを思って離れたことなど明白だった。結局、守るつもりで守られていたことに今更気付く。彼女はこれ以上、日常を壊すことのないように、と。壊れることの辛さをよく知っていたからこそ。
「情けねぇな、俺ら」
悟浄の吐き出した紫煙を見上げて思う。3ヶ月経った今も、貴女を忘れることなどない。
誘惑蜘蛛