誘惑蜘蛛 book

□誘惑蜘蛛
1ページ/2ページ

消えてしまった彼女を、見つけてしまえば。何かまた、変わったのだろうか。





「名無しさん、元気にやってっかな」

「しっかりしてましたけど、心配は心配ですよね」

「探すべきなのかな」

「探されたくないからマンションにも戻っていない、と考えるのが普通でしょうねぇ」





卒業式の日。4人の元にはそれぞれメールが届いた。内容は、今までの謝罪と感謝。貴女はこうなることを望んでいたんだろうか。


卒業と同時に消えてしまった彼女は泣かずにいるだろうか。


彼女が、僕たちのことを思って離れたことなど明白だった。結局、守るつもりで守られていたことに今更気付く。彼女はこれ以上、日常を壊すことのないように、と。壊れることの辛さをよく知っていたからこそ。





「情けねぇな、俺ら」





悟浄の吐き出した紫煙を見上げて思う。3ヶ月経った今も、貴女を忘れることなどない。












次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ