誘惑蜘蛛 book
□誘惑蜘蛛
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悟浄先生と理事長がいなくなって。
静かになった部屋にひとり。
ふたりが気になって、いたたまれなかったけどわたしにはどうすることもできなくて。
電話しようと思っては、ためらってやめる。
なんて話したらいいんだろう。
言わなきゃいけないことはあるはずなのに、わたしは話せないまま。
ソファーに座って、膝に顔を埋める。
わたしを支えてくれたひとたち。
浮かんでは消えて、どうしようもなく焦燥にかられて。
「ごめ、ん、なさい、」
あの時わたしが制止していれば。
何か変わっていただろうか。
誘惑蜘蛛