誘惑蜘蛛 book
□誘惑蜘蛛
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わたしが着いた時にはもう、手遅れだった。
薄暗い部屋に寝かされた三人を見つめる。
声が、出ない。
なんて声をかければいいのか、わからないから。
動くことも、できない。
近付いて、その顔を見てしまったら。
動かない姿を見てしまったら。
もう戻れない気がして。
「桜沢、」
着いて来てくれた理事長がわたしの肩に触れた。
顔は見えなかったけど、その声に幾分か安心して。
一歩、また一歩、と、三人に近付く。
昨日まで元気だった。
昨日まで、笑っていたのに。
今は動かない、三人。
誘惑蜘蛛