誘惑蜘蛛 book
□誘惑蜘蛛
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「綺麗、ですけどちょっと苦しいです、…」
「……お前、名前は?」
何故か、惹かれた。
最初、風に吹かれた、この女を見た時から。
綺麗で。
しかし、まだあどけなさを残していて。
まだ子供のはずなのに、どこか達観した何かがあって。
目が反らせなくなったのは、生まれて初めてだった。
「あ、すみません、桜沢名無しさんです、一年の。」
「変わった奴だな、……また花瓶、頼む。」
「、はいっ」
これが、私と三蔵の最初の出会い。
届かない人だと思っていた。
もう、喋ることなんて、できないと思ってた。
あの時は、これから先、こんなにも関わって行く、なんて、考えもしなかったんだ。
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