誘惑蜘蛛 book
□誘惑蜘蛛
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夢を、見た−
それは、まだ皆が生きている頃の−
うっすらと目を開ければ、もう日は高く上がっていた。
今日は土曜日。
学園は休み。
やはり、というか当然、三蔵の姿は見当たらなかった。
なんだか、目元に違和感がある。
名無しさんは目元を触った。
「やっぱり、……」
あの頃の夢を見たからか、目元には涙の流れた痕跡があった。
ふとカレンダーを見れば、今日は月命日。
あの夢を見るのは、淋しい時か。月命日の時。
「……休みか、」
休みとは、ついてない。
今日は誰かと話していないと、辛い。
名無しさんは顔を洗い、着替えを済ませた。
菜緒に会いに行こうか−
……きっと部活だろう−
他にあの頃の事を知っている友達はいない−
ふと、浮かぶのは先生達の顔−
駄目−
みんな“家族”があるんだから−
大丈夫−
一日くらい、平気だよね−
そう、自分にいい聞かす−