誘惑蜘蛛 book

□誘惑蜘蛛
7ページ/7ページ









情事後−








名無しさんはベットの中で、そっと三蔵に抱き着いた。








「……本当に珍しいな。お前がそんなに甘えるのは。なんかあったのか?」


「べつに、……何もないよ?」








言えない。
一ヶ月間、会えなくて淋しかったなんて。




それは言ってはイケナイ言葉、だと。






その代わり。
少し、少しでいいから。
このままでいさせて。










「…………、」






抱き着いてくる名無しさんを、抱きかえす権利など、俺にはあるのだろうか。


何もかも中途半端で何も捨てられない俺に。





それでも。
名無しさんを愛している気持ちは本物で。








独占する権利などないのに、独占したいと思ってしまう。















それに悟浄が言った言葉さえ。




『一ヶ月会わない間にどれだけ俺が名無しさんを抱いてると思う?』











あの勝ち誇った笑みは無性に腹が立つ。








もっと会いたい。
毎日でも、会いたい。


けれど。
それは叶わないことなのは自身が1番よくわかっているから。










三蔵は現実を忘れるかのように、名無しさんを強く抱きしめた。










どうか今だけは。




















NEXT

前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ