誘惑蜘蛛 book
□誘惑蜘蛛
2ページ/7ページ
どうにかバレる事もなく、二人は無事に名無しさんの家についた。
家の中に入れば、妙な緊張はもうない。
何も気にする事はないのだ。
「ふぁ、疲れた……」
「何婆くせぇ事言ってんだ?」
「理事長はもう少し周りの目ってものを考えて下さいよ、」
「……その呼び方、気にくわん」
「っ、はいはい。」
ブレザーを脱ぎ、三蔵の近くに座る。
煙草の匂いが鼻を掠める。
懐かしい香。
悟浄先生とはまた違った匂い。
名無しさんはそっと、三蔵の肩に寄り掛かった。
「珍しいな、名無しさんから甘えてくるのは」
「………そういう時もあるよ、」
そっと、髪を撫でてくれる三蔵の綺麗な指。
一ヶ月は結構長い。
そう感じさせられる。