誘惑蜘蛛 book
□誘惑蜘蛛
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金曜日の夜。
わたしの家に来てくれたのは、八戒。
今までと違う、そののんびりとした滞在に、小さく心が痛んだ。
「名無しさん、少し疲れてるみたいですね。……僕のせい、ですかね」
「っ、そんな」
せい、だなんて言わないでほしい。
あなたはわたしを傷つけることなど何もしていないのだから。
していないからこそ、わたしの心は苦しいのだ。
「それとも、誰かに嫉妬に任せてひどく抱かれたから、ですかね」
「っ、」
夕食を食べ終えて、2人で座ったソファー。
髪を梳かれたり、啄むキスをもらったり。
そんな、まったりとした時間。
少し意地悪に微笑んだ八戒は、昼間の顔ではなく、学校で見ることはない夜の顔をしていた。
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