誘惑蜘蛛 book
□誘惑蜘蛛
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「おはようございます」
「おはようございます、桜沢さん」
もう、変わってしまった。
先生との関係は、もう元に戻ることはできなくて。
それでも、それでいいとさえ思えたのはきっと、あなたがわたしに向ける眼差しが、優しいことは変わらなかったから。
「…まさか、八戒もかよ」
「悟浄、まさか、ですかね。どちらかと言うと先に惚れたのは僕だと思いますけど」
「や、お前はいい先生やってんのかと思ったからさ」
「…僕のことは悟浄はよく知ってると思ってましたけど」
「…思い出したよ、お前が実は1番ハマったら無茶するタイプだってことをな」
彼女の後ろ姿を見ながら、小さく溜息を吐く。
目の前の男、悟浄は自分のことを本当によくわかっていると思う。
上辺では清廉潔白な教師を演じていて、それでいるのにタガが外れれば突き進みたくなる。
1番危うくて、脆いことを彼女は気づいただろうか。
「僕のためにも、彼女のためにも。ルールを作っておいたほうが賢明かもしれませんね」
盲目的に彼女を愛してしまった。
いつの日か暴走して彼女を傷つけてしまわないように。
誘惑蜘蛛