誘惑蜘蛛 book
□誘惑蜘蛛
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「あれ、桜沢さん?どうしたんですか、こんなとこに。」
「あ、八戒先生っ!」
職員室の、奥にある部屋。
その部屋は、主に資料庫のようなところだけれど。
私を含め、生徒の間では説教部屋として知られている。
そんな場所で。
「ンー?今桜沢チャンと密会中なの。」
「違いますー、説教されてるんです、あまりにも英語が出来なくて…」
こんなこと、八戒先生に知られたくはない。
けど、悟浄先生の言うような勘違いをされたらもっと困る。
「桜沢さん、国語の成績は全国でもトップなんですけどねぇ」
「だって英語なんて昔から使ってないもの、どうしたら覚えられるんですか…私は日本人だから英語必要ないんですっ!」
「英語出来ない奴ってだいたいそう言い訳すんだよなー」
「う、………」
「まぁ、得意不得意は誰にでもありますよ、ね?」
八戒先生に励まされ、悟浄先生にからかわれ。
なんだかんだで、プリントを解く手は止めない。
「ここ、はずれ。」
「うわーんっ、八戒先生ー…!」
「僕も英語はちょっと…」
「悟浄先生スパルタなんですよー助けてぇ…」
「変なコト言うとプリント倍になるかも、ネ?」
「う、あ、……」
成績の関係上、(それは良すぎるか悪すぎるか、だけど、)悟浄先生と、八戒先生と、関わるのは自然と多くなって。
へたしたら、担任の先生よりも、二人のほうが仲がいいかもしれない。
っていうくらい、悟浄先生と八戒先生とは仲が良い。
「早く運動したい…」
「あともう少しだろ?頑張れ頑張れ。」
ふと、思いを馳せるのは体育館。
今頃、バレー部はサーブ練習でもしてるだろう。
そして悟空先生は、無邪気な笑顔で、バスケをしてるはず。
同じ体育館だからか、悟空先生と仲良くなるのに、時間はかからなくて。
今は先生、というより、近所のお兄さん、と言った感じだ。
「よし、せーかい。行っていいぞー」
「やったぁ!ごじょ先生、ありがとーございました!八戒先生も!さよなら!」
やっと正解した、最後の問題。
早く、早く。
私は二人に笑顔で挨拶すると、鞄を持って体育館へと向かった。