誘惑蜘蛛 book

□誘惑蜘蛛
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事の始まりは、学生の一大イベント、修学旅行の準備からだった。


最初、修学旅行は行くのを辞めようと思っていたわたしだけど、友達や先生のすすめや協力によって、行くことにして。


うちの学校の修学旅行は海外だから、必然的にパスポートがほしくなる。








「桜沢さんはパスポート、もってるんですね」


「はい、あるのは確かなんですけど…どこにしまってあるのか、探してみます」






今年の修学旅行は、八戒先生も悟浄先生も、悟空先生も行くことになっているのだと、理事長から聞いて。
どこから聞いたのか、今は八戒先生が声をかけてくれて、1人でしなければない準備を気にかけてくれた。






「そういうの、全部お母さんに任せてあったので、」


「普通はそうですよ、どこのうちも」







穏やかに微笑む八戒先生に、心が安らぐ。
この人はいつも、こんな風に穏やかに笑っている。
そんな印象が強くて。
頼りになって、優しくて。


先生と話すのは、わたしにとって安らぐ時間だった。






「そうだ、今日夜少し伺ってもいいですか?パスポートが見つかったら書いてもらいたい書類があるので」


「あ、はい。ごめんなさい、ギリギリで行くことにしちゃったから大変ですよね」


「いいんですよ、桜沢さんと一緒に行けて嬉しいです」







ギリギリになって行くと決めても、先生がフォローしてくれるおかげでわたしは慌てずに済んで。
まだまだ、みんなに迷惑をかけて、助けてもらってばかりだ。


一人前になれるのはまだまだ先。





「じゃあ、また」








八戒先生と別れて、帰宅する。
先生が来る前に、パスポートを探しておかないと。





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