誘惑蜘蛛 book
□誘惑蜘蛛
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日課だった理事長室の花の水替えに、行こう行こうと思いながらも躊躇って、ついに放課後になってしまった。
「うう、……どうしよう、」
行きたい気持ちと、面と向かって逢ってしまったらなんて話していいのかわからない気持ちが交錯してなかなか進まない。
教室から出て、近くをうろうろするものの、理事長室のドアはノックできなくて。
もしかしたらものすごく怒っているかもしれない。
もしかしたら顔も見たくないと思われてるかも、なんて考えてしまっては足が動かない。
「明日、からちゃんとします、」
誰に呟くでもなく一人決意と懺悔をして足早に理事長室の前を過ぎようと歩き出す。
明日から、ちゃんとやります。
だから今日はごめんなさい。
「っ、え、」
ギュッと鞄を握り締めて歩いていれば、ふいに腕を引かれて引きずり込まれる。
そこは紛れもなく理事長室で、わたしを引っ張った人物は紛れもなくわたしが今し方考えていたひと。
「あ、りじ、ちょ、」
「このまま逃がすと思うか?俺が」
バタン、とドアが閉まり、見上げれば意地悪い顔で笑っている理事長と目が合う。
近い距離に、思わず息を飲んだ。
「ご、ごめんなさい、」
「それは逃げようとしたことに対してか?それとも俺以外の男に簡単に股を開いたことに対してか?」
「っ、そんな、」
壁と、理事長に挟まれて身動きとれない。
顎をすくわれながら紡がれたのは恥ずかしすぎる言葉で、顔が赤くなる。
初めてを失ったばかりのわたしに一体なんてこと言うんだろう。
けど、言葉は恥ずかしいけど事実には違いなくて。
強く反論もできないまま口ごもる。
悪い、と、思ってないわけないから。
「……ごめんなさい、」
「まったくおまえは……お仕置きが必要だな」
「っ、え、でも、」
「でももなんでもない」
ニヒルに笑った理事長に、慌てる。
お仕置き、ってなんだろう、あんまり痛いのはやだな、かと言ってお仕置きと言われて痛くないことなんて想像できなくて。
固まっていれば、ふいに抱き上げられて目を白黒させる。
そのままソファーに寝かされて。
「理事長っ、」
「却下」
「……まだ何も言ってません、」
「大体想像できる。何を言われようが止めない。お仕置き、だからな」
両手を頭の上で拘束されて、胸元のリボンを解かれる。
制止しようとすれば、言う前から却下のお言葉。
「名無しさん、」
太股を撫でられて、びくんと体が揺れる。
首筋に舌を這わされてしまえばわたしにはもう、声を出さないように心がけることしかできなくて。